ビタミンDと気分の関係 ―北欧・スウェーデンに学ぶ心と体のセルフケア -2025年11月28日掲載-

冬になると、なんとなく気分が落ち込みやすい、やる気が出ない、眠っても疲れが取れないという声が増えます。原因はさまざまですが、近年注目されているのが、「ビタミンD」と「日照不足」との関係です。

ビタミンDは骨の健康に関わることでよく知られていますが、実は脳内の神経やホルモンの働きにも影響することが分かってきています。
今回は、日本よりも冬の日照時間がずっと短い北欧・スウェーデンの生活文化を参考にしながら、ビタミンDと気分の関わりをまとめたいと思います。

ビタミンDが不足しやすい「冬」

ビタミンDは、日光(紫外線)を浴びることで、皮膚で合成されるほか、魚や卵、キノコ類からも摂取できます。しかし冬になると、日照時間が短くなったり外に出る時間が減ったりするため、多くの人がビタミンD不足になりやすくなります。98%の日本人がビタミンD不足に該当するという研究結果もあります。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるだけではなく、脳の神経細胞の働きやホルモンの調整にも関わっているとされ、気分の安定に影響する可能性が示されています。ただし、「ビタミンD不足=うつ病になる」という単純な関係ではないことに注意が必要です。気分の落ち込みには睡眠・ストレス・生活リズムなど多くの因子が絡み合っています。

スウェーデンに学ぶ冬の過ごし方

スウェーデンでは冬になると、地域によっては日照時間が数時間しかない日もあります。こうした環境のため、季節の変わり目に気分が落ち込む「季節性感情障害(SAD)」がよく知られています。
その一方で、スウェーデンの人々は冬の過ごし方に独自の工夫を重ね、ビタミンD不足や気分の低下を防ぐ文化を築いてきました。

1.魚を積極的に食べる文化
スウェーデンでは、サーモンやニシン、マスといった脂の多い魚がよく食卓に並びます。これらの魚にはビタミンDが豊富に含まれ、長い冬を乗り切るための栄養源として重宝されてきました。
2.“光”にこだわる暮らし
北欧では、明るいLED照明や「ブライトライト」と呼ばれる光療法用のライトを生活に取り入れる人も多く、朝にしっかり光を浴びることで体内時計を整える習慣があります。日光が足りない冬でも、できるだけ“明るさ”を確保しようという工夫です。
3.ビタミンD強化食品の普及
牛乳やヨーグルトなど乳製品にビタミンDを添加することが一般的で、家庭でも自然にビタミンDを補給できる仕組みが整っています。
こうした生活スタイルは、「日照が少ないからこそ、足りないものを補い、明るさを取り込む」という北欧の知恵が反映されています。

今日からできるセルフケア

魚料理を週2~3回
サバ、鮭、イワシが特におすすめ
10~20分の散歩
日中に少しでも太陽の光を浴びる
ビタミンD食品の活用
卵、干ししいたけ、強化乳など
朝の光を取り入れる
カーテンを開けて、体内時計を整える

サプリメントを考える場合は、薬との飲み合わせや用量など注意点もあるため、薬剤師にご相談ください。

ビタミンDと気分の関係 ―北欧・スウェーデンに学ぶ心と体のセルフケア

気分の落ち込みが続くときは相談を

冬は環境の変化から心と体が影響を受けやすい季節だと思います。ビタミン不足や日照不足といった要因が重なることで、気分が落ち込みやすくなることは決して珍しいことではありません。症状が続く場合は、早めに医療機関へ相談してください。
また、薬局をご利用の際には、少しでも気になることがあればご遠慮なく相談していただけると幸いです。