美味しいものを食べに出かけたり、旅行したり、お買い物に行くなど日常の何気ない行動や、元気に歩き、寝たきりにならないためには骨を丈夫にすることが大切で、骨粗鬆症にならないように気をつけたいものです。
骨粗鬆症とは
徐々に骨の量が減って、骨折しやすくなる状態です。骨の強度は骨密度70%と骨質30%程度で決まると言われていて、栄養の観点からすると、骨密度にはカルシウムなどのミネラル類が関係し、骨質にはコラーゲンなどのタンパク質類が関係しています。骨は新陳代謝によって常に作り替えられています。
破骨細胞が古くなった骨を壊し、そこに骨芽細胞が作用して、新しい骨を作ります。バランスが崩れて破骨細胞の働きが骨芽細胞の働きを上回ると、骨量が減少します。高齢者や閉経頃からの女性は骨量が減少しやすくなります。また、若い頃の過度なダイエット、運動不足、喫煙や多量の飲酒、長年のステロイド薬服用、糖尿病や慢性腎臓病なども骨粗鬆症の要因にあげられます。
骨の健康を保つには
骨の健康のためには、様々な栄養素が必要になります。腸管からのカルシウムの吸収と骨への定着を助けるビタミンD、カルシウムの骨への定着にはビタミンK、骨のコラーゲンの合成などにはビタミンCやビタミンB群が関係します。また、骨への荷重負荷による骨形成を促進するためには、適度な運動が必要ですが、痩せすぎていると日常の骨への荷重負荷が少なくなるため、適正な体重管理が必要です。
適正な体重管理は、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標とするBMI(体重を身長で補正した値)の範囲が参考になります。高齢になってからの体重増加は体脂肪のみが増加する傾向があるため生活習慣病の悪化にも注意が必要です。
たんぱく質は1日体重1㎏あたり、1g程度摂取が一般的で、動物性(肉・魚)や植物性(豆類)など様々な食品から摂るのがよいでしょう。
カルシウムは「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」では、1日あたり、食品から700㎎~800㎎を目標とし、牛乳など乳製品や小魚類、海藻、緑黄色野菜、大豆製品など様々な種類を組み合わせて摂ることが勧められます。
ビタミンKは緑黄色野菜や納豆に多く含まれます。ただし、抗血栓薬のワルファリンを服用している人は納豆を食べないように、また、緑黄色野菜や海藻類などは大量に食べないようにしてください。
ビタミンCは果物類や、野菜類から摂れます。ビタミンB群は肉、魚類や野菜類など幅広く様々な食品に含まれています。
特定の食品に偏ることなく、バランス良く摂ることが大切です。
治療方法について
骨量が減少し、骨粗鬆症と診断されると薬物治療が行われます。
骨粗鬆症治療薬は数多くの種類があり、大まかに「破骨細胞の働きを抑える薬」「骨形成を高める薬」「破骨細胞の働きを抑え、骨形成を高める両方の作用のある薬」「骨の作り替えに必要な栄養素を補い骨代謝を改善する薬」に分けられます。骨粗鬆症の状態によって使い分けられますが、治療薬を服用している時も適切な栄養管理は不可欠です。
一般的には「破骨細胞の働きを抑える」ビスホスホネート製剤が広く使われますが、服用とあわせて適切なカルシウムやビタミンDなどの補給が必要です。ただし、骨代謝改善薬の活性型ビタミンD製剤使用時は、高カルシウム血症の恐れがあるため、カルシウム剤やサプリメント併用には注意が必要です。
骨粗鬆症にならないためには、適正な体重を獲得し維持するための食事、適切な運動、1日体重1㎏あたり1gのたんぱく質摂取、カルシウム1日700㎎~800㎎の過剰にならない程度の摂取、ビタミン類の摂取が大切です。
ただし、単品で摂るのはお勧めできません。例えば、煮干しをたくさん食べてカルシウムを摂ろうとして塩分過多になったり、たくさんの牛乳や乳製品でカルシウムを摂ろうとして、脂質の過剰摂取によるコレステロールの上昇も考えられます。
毎日の食事で、様々な種類の食品からバランス良く栄養を摂るように心がけましょう。