皆さんは漢方薬をご存じでしょうか。
中国が起源で、日本で独自に発展した「漢方医学」で使われる薬のことです。
江戸時代中期ごろに、西洋医学である「蘭方(らんぽう)」に対して生まれた日本語です。
自然界に存在する植物や動物、鉱物などの薬効となる部分を「生薬(しょうやく)」と称し、基本的には2つ以上組み合わせて作られます。
五大古典といわれる黄帝内経素問(黄帝が岐伯という先生に質問する形で進む書物。養生法や東洋医学の理論などが書かれている)、霊枢(黄帝が岐伯という先生に質問する形で進む書物。主に鍼灸の分野からみた養生法、病症と治療法、生理や病理のことについて書かれている)、神農本草経(365種類の生薬を上品120種、中品120種、下品125種に分けて解説)、傷寒論(急性期の病態を三陰三陽と呼ばれる6つのステージに分け、それぞれの病期の病態と、適応処方を記している)、金匱要略(循環器障害、呼吸器障害、泌尿器障害、消化器障害、皮膚科疾患、婦人科疾患から精神疾患までの慢性病の治法を論じている)の処方が元となっています。
長く飲まないと効かない、自然のものを使っているから副作用がない、というイメージを持っている方が多いかと思います。
しかし、こむらがえりの時は芍薬甘草湯を1包飲むだけでも効くことがあります。
副作用についても以前はないと考えられた時期もありますが、今では間質性肺炎、肝機能障害などの副作用も報告されています。
何となく、こんな感じの症状にはこの漢方が効くというような、経験則から選ばれているようなイメージがありますが、現代の最先端の西洋医学でも対応が難しい状態を改善するという報告がある漢方薬をいくつか紹介させていただきます。
- 大建中湯(だいけんちゅうとう)
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- 刺激性下剤を使いにくい時に、慢性便秘症に伴う腹部膨満感や腹痛を軽減する
- 抑肝散(よくかんさん)
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- レビー小体型認知症の妄想や幻覚・幻視の症状を改善する
- 認知症患者の行動・心理症状(BPSD)の治療に加え日常生活動作も改善する
- 認知症の幻覚、妄想(物取られ妄想が典型的)、抑うつ、意欲低下などの「周辺症状」の改善に有効な可能性
- 六君子湯(りっくんしとう)
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- 食欲をコントロールする消化管ホルモンのグレリンを増やし、食欲不振などを改善する
今後も漢方薬の新しい効果が報告されることでしょう。古くて新しい薬、漢方薬に期待が持てます。