体温とは
体温とは、身体の内部の温度のことです。身体の部位や臓器によって温度に多少の差がありますが、厳密にいうと外の気温が変化しても一定温度に調整されている身体の中央の温度のことを指し、これを核心温といいます。
体温のコントロール
人間は恒温動物であり、体温を常に一定の温度に維持しようとする仕組みを持っています。この仕組みを体温調節機構といい、間脳の視床下部にある体温調節中枢によってコントロールされています。例えば外気温が下がると感覚神経によって体温調節中枢に伝えられ、震えによって筋肉を収縮させ、体熱を産生して体温を上げます。外気温が上がると汗をかくことによって体熱を放散させ、体温を下げます。
体温の身体の中での変動
体温は一定に維持されていますが、個人の状況(生理的変動因子)により正常の範囲内で変動しています。生理的変動因子には大きく分けて4種類あります。
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- 日内変動
- 同じ人の体温でも、測定する時間によって約1℃くらいの違いがあります。
脇の下で測定した場合、睡眠時と早朝(午前4~6時)が最も低く、朝食後に急激に上昇した後、穏やかに上昇。夕方(午後2~6時)が最も高くなった後下降していきます。
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- 性周期に伴う月変動(女性)
- プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量によって基礎体温が変化するといわれています。
月経後に低体温が続き、排卵日にやや下がって最低に。その後高体温が続き(排卵以前の低体温より0.5℃高温)、月経開始とともに体温が低下します。
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- 年齢の違い
- 小児は成人より高く、高齢者は低い値になります。
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- 活動・運動
- 運動や食事後は体温が上昇します。入浴後は体温が低下します。
平熱とは
体温には個人差があるため決まった平熱は存在しません。正常な体温の目安(標準体温)は存在しますが、ひとりひとりが自分の日頃の体温を知っておくこと、他の症状との関係をふまえ、総合的に体調を判断することが重要です。
標準体温
標準体温は測る身体の部位によって異なります。
低い順に、以下の通りです。
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- 脇の下
- 36~37℃
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- 口の中 横になった状態
- 1+0.2~0.3℃
- 口の中 座った状態
- 1+0.3~0.5℃
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- 鼓膜
- 1+0.6℃
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- 直腸
- 1+0.8℃~0.9℃
体温計の種類
現在よく使われている体温計は2種類です。
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- 電子体温計
- 体温計の先端にある温度センサで温度を測定し、デジタル表示するもの。
そのときの体温を示す実測式、短時間で体温を予測する予測式、両方の機能をあわせもつものがあります。
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- 赤外線体温計
- 赤外線センサにより赤外線量を測定し、体内温度を計算するもの。身体に触れずに測定できるものもあり、衛生的に使用することができます。
体温測定のポイント
一般的な体温測定法として、電子体温計を用いた脇の下での体温測定のポイントをご紹介します。
- 準備
- 測定前は運動や食事を避け安静にする
- 汗をかいていたらよく拭き取る
- 脇は閉じた状態にしておく
- 測定時
- 体温計の角度は30~45℃に
- 体温計は下から上に、脇の下の最深部の真ん中に先端が当たるようにする
- 常に左右同じ側で測定する
- できるだけ脇と体温計を密着させる
発熱の原因
発熱の原因には大きく分けて4種類あります。
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- 機械的刺激
- 体温調節中枢に物理的刺激が生じることによっておこるもの。脳腫瘍、脳出血など。
- 科学的刺激
- 外因性発熱物質によるもの
- 体外から侵入した微生物や無機・有機物質などによっておこるもの。
- 内因性発熱物質によるもの
- ウイルスや細菌感染の他、悪性腫瘍などの疾患が原因となり、体の中でサイトカインとよばれる物質が発熱をおこすプロスタグランジンを産生することによるもの。
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- 薬物性の刺激
- 薬の作用により、体温中枢が刺激されておこるもの。薬物アレルギー、悪性症候群など。
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- 精神的刺激
- 過度な緊張、精神的ストレスなどで交感神経が興奮しおこるもの。
新型コロナウイルス感染症の影響で、家庭や職場、学校などで体温を測る機会が増えた方が多いのではないでしょうか。体温は身体の状態を知る指標のひとつです。痛みを伴わずに気軽に測定でき、私たちにとって身近なものでもあります。
体温について正しい知識を持ちましょう。