糖尿病と歯周病 -2018年3月5日掲載-

現在日本で「糖尿病が強く疑われる人」、「糖尿病の可能性を否定できない人」は、合わせて約2,000万人いると言われています。一方、一般に「歯周病」と言われる、歯肉炎や歯周疾患の総患者数は約330万人で、年々増加しています。

この2つの病気、実は深いかかわりがあることをご存じでしょうか。

糖尿病とは?

糖尿病は、血糖値を下げるホルモン(インスリン)が不足する、もしくは正常に働かなくなる病気です。インスリンは、飲食して糖分が血液中に入ってくると、糖分を体に取り込んで血糖値を下げる働きがあるホルモンです。糖尿病は、そのインスリンを作る膵臓の細胞が自己免疫異常で壊される1型糖尿病と、遺伝や食生活、運動習慣やストレスが関係する2型糖尿病の2つに大きく分かれます。歯周病に関係するのは主に2型糖尿病です。

歯周病とは?

歯周病とは、細菌が関係する病気です。食べかすや磨き残しがあったり、喫煙などで口内環境が悪化したりすると、細菌が口の中で繁殖しやすくなります。歯と歯茎の間に菌が繁殖して炎症が起こり、歯茎が赤くなったり腫れたりします。症状が進行すると、歯を支えている骨が溶けて歯を支えきれなくなり、最悪の場合抜けてしまうこともあります。

歯周病菌が糖尿病の原因に?

歯周病の原因になる菌(歯周病菌)は歯茎の血管に侵入し、全身に回ると言われています。菌はすぐに死滅しますが、死骸に「内毒素」というものが残ります。この内毒素から体を守るために、体が「TNF-α」という物質を作り出すのですが、それがインスリンの働きを邪魔してしまいます。これにより血糖値が上がってしまうのです。

歯周病を治せば血糖値が下がった例も

もちろん、糖尿病になるのは食生活、運動習慣、遺伝等さまざまな要因がありますが、正しいブラッシングや定期的な歯科でのクリーニングによって歯周病を治療したことで、血糖値の指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血液検査値が下がったというデータもあります。まだ血糖値に異常がない方でも、歯周病の治療をしたり予防をしたりすることで、血糖値の上昇を予防できる可能性があるのです。

血液検査で血糖値が高いと指摘された方、もしくは既に糖尿病の治療をしている方で、歯茎が腫れる、あるいは歯茎から出血する等の症状が気になる方は、一度歯科医に相談してみてはいかがでしょうか。

歯科治療に注意が必要な薬もあります!

ただし、今薬を飲んでいる方は、歯科治療の際に注意すべき薬が含まれていないか確認が必要です。例えば、血をかたまりにくくするような薬の中には、抜歯等の処置をする前に中止するべき薬もあります。また、骨粗鬆症の治療薬の中には、顎の骨に影響する副作用を起こす危険性をもつ薬もあるのです。

しかし、薬や病状によって対応は異なりますので、自己判断で服薬を中止せずに、まずは医師や薬剤師にご相談ください。そして、歯科医にかかるときは、お薬手帳等でどんな薬を飲んでいるかを伝えると良いでしょう。