今年7月兵庫県伊丹市で、小学生がヤマカガシに噛まれて重体になる事件がありました。このニュースを聞いて驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ヤマカガシは通常大人しい蛇で深く噛まなければ毒が入らないため、無毒だと思っていた方が多いと思います。
実はヤマカガシに対する血清が、すべての病院にある訳ではありません。
この時に近畿にはヤマカガシに対する血清はなく、群馬県にあるジャパンスネークセンターに併設された日本蛇族学術研究所から届けられたそうです。
今回は皆さんの近くで遭遇する可能性のある毒蛇である、ニホンマムシとヤマカガシ、そしてその治療法についてご紹介していきましょう。
身近な毒蛇について
マムシ
北海道から九州まで生息しています。上顎の先端に2本の毒牙を持ち、咬むことで毒が注入されます。
出血毒と神経毒の両方を持ち、腎障害を防げれば予後は良好ですが、中には筋壊死による後遺症が後々まで残ることもあります。
ヤマカガシ
本州と四国と九州に生息しています。毒牙は無く、上顎奥にナイフ状の牙を持ち、それにより皮膚が傷ついた後、牙の根元にある毒腺から毒が染み込みます。出血傾向を中心とした重篤な中毒になります。
一般的にヤマカガシというと赤と黒の斑点が交互になった模様で有名ですが、見た目は地域により異なり、近畿では全身くすんだ緑色で赤い斑点はわずかだそうです。
治療について
マムシ
標準的な治療法が確立されておらず、医療機関で経過を観察して投薬が判断されます。アナフィラキシーショックなどの副作用を考慮の上、マムシ抗毒素血清(静脈注射により数時間で効果が出る)や経験的にセファランチンという薬が選択、または併用されます。
全ての患者について、24時間は経過観察が必要です。
ヤマカガシ
乾燥ヤマカガシ抗毒素を使います(静脈注射により数時間で効果が出る)。
ただし、すべての病院にある訳ではありません。
蛇Q&A
Q:頭が三角だと毒蛇って本当?
A:三角だから毒蛇、丸いから無毒な蛇とは限りません。
ヤマカガシは毒蛇ですが、頭の形は丸みがあります。また、時々無毒なアオダイショウの子蛇が、親とは模様が違い、怒ると威嚇して頭を三角形にするので、毒蛇のマムシと間違えられることがあるようです。
Q:蛇の毒って咬まれた時だけ危険なの?
実は、ヤマカガシには頭の部分にも毒があります。
これは、ヤマカガシがヒキガエル(心臓に影響のある毒を持つ)を食べることで、少し構造を変えた毒を持つと考えられているようです。
まれに子供が蛇にいたずらをして棒で頭を叩いたり、農家の方が蛇を処分する際に蛇の頭を切ったりすると、毒液が目に飛ぶことがあります。
目に入った際はよく水で洗い、すぐに眼科に行きましょう。
Q:蛇に咬まれたらどうしたらいいの?
A:急に走ると全身に毒がまわる可能性があるので、できるだけ安静にして、咬まれた場所は心臓より低い位置に保ちましょう。できれば蛇の特徴を確認し、その場で蛇を特定しようとせず、迷わずすぐに病院に行きましょう。
最後に・・・
蛇というと怖いという印象があると思いますが、身近にいる蛇は大抵が無毒なシマヘビやアオダイショウです。臆病なマムシやヤマカガシも人がむやみに近づいたり、イタズラしたりしなければ、決して怖い蛇ではありません。
生息域に行かれる際には、蛇を見たら近寄らない・草むらでは棒で確認しながら進む・長靴長ズボンで、肌の露出が極力少ない服装をすることを心がけましょう。