妊娠中の食事について -2014年4月30日掲載-

妊娠中の食事は皆さんにとって気になるところかと思います。
そこで、妊娠中に特に重要と思われる栄養素についてまとめました。

妊娠初期(妊娠1ヶ月~4ヶ月)

葉酸

受胎前後の十分な葉酸摂取が、神経管閉鎖障害のリスクを低減すると言われています。
胎児の神経管閉鎖障害とは、受胎後およそ28日で閉鎖する神経管の形成異常であり、無脳症・二分脊椎・髄膜瘤などの異常を引き起こします。
その他にも、口唇口蓋裂や先天性心疾患のリスクも低減すると言われています。

妊娠時の摂取推奨量
480μg/日
含まれる主な食品(100g中)
  • アスパラガス(180~190μg)
  • 枝豆(ゆで260μg)
  • オクラ(110μg)
  • 春菊(ゆで100μg)
  • ほうれん草(ゆで110μg)

※但し、加熱・調理によって失われやすく、吸収率も高くないため、サプリメントによる積極的な摂取が推奨されています。

妊娠中期(5ヶ月~7ヶ月)

カルシウム

胎児の骨や神経、各種臓器を形成するのに必要な栄養素です。
妊娠中、母親から胎児へとカルシウムが運ばれますが、もしカルシウム量が不足してしまうと、母親の骨から溶け出し胎児へと送られます。
そのため、カルシウムの摂取が不足しても、胎児への影響が出るのは最後です。
ただ、母親の骨が脆くなってしまうため、骨粗鬆症になりやすくなってしまいますので、しっかりカルシウムを摂取することが必要となります。
但し、妊娠中は腸からのカルシウムの吸収率が上がりますので、非妊娠時より特に多く摂る必要は無いと言われています。
しかしながら、現在の日本人のカルシウム摂取量自体が少なくなってしまっているため、カルシウムを毎日摂るように心掛ける必要があります。

妊娠時の推奨摂取量
600mg~700mg
含まれる主な食品(100g中)
  • 牛乳(110mg)
  • ヨーグルト(120mg)
  • プロセスチーズ(630mg)
  • ししゃも(生干し・焼き380mg)
  • しらす干し(半乾燥520mg)
  • 桜エビ(ゆで690mg)

妊娠中には、胎児に酸素や栄養を運ぶため、体内の血液量が増加し、それにより必要な鉄量が増加することで貧血になる恐れがあります。
貧血になってしまうと、胎児へ酸素や栄養を運べなくなってしまうので、胎児の発達にも影響が現れる可能性があります。
また、母親が貧血になってしまうことで、立ちくらみによる転倒の危険もあるので、鉄分摂取は重要です。
鉄分はタンパク質やビタミンCと一緒に摂ると吸収が良くなります。

妊娠時の推奨摂取量(18~29歳)
初期:8.5mg/日
中期・末期:21mg/日
含まれる主な食品(100g中)
  • 干しエビ(15.1mg)
  • あさり(3.8mg)
  • ひじき(55mg)
  • しじみ(5.3mg)
  • パセリ(7.5mg)

ビタミンC

鉄の吸収を良くし、新生児の壊血病を防ぐと考えられています。

妊娠時の推奨摂取量
110mg/日
含まれる主な食品(100g中)
  • 赤ピーマン(170mg)
  • 芽キャベツ(160mg)
  • アセロラジュース(120mg)
  • イチゴ(62mg)
  • モロヘイヤ(65mg)

妊娠末期(8か月~10か月)

DHA

不飽和脂肪酸の一種で、体内では合成できないため必須脂肪酸と言われています。主に魚油に含まれています。
DHAは胎児の脳の発達には欠かせないものとされています。
また、DHAが不足すると脳内のセロトニン量が減少し、産後うつのリスクにもつながると言われています。
そのため、積極的な摂取が必要になります。

妊娠時の推奨摂取量
1g/日
含まれる主な食品(100g中)
  • マタラ(42mg)
  • ニシン(770mg)
  • マイワシ(41mg)
  • 紅サケ(480mg)

ビタミンA

体内で合成されず、胎児の発達にとっては必須です。
胎児に必要なビタミンAは、ほとんどが最後の3ヶ月で蓄積されるため、妊娠末期に多く摂取する必要があります。
但し、過剰摂取による胎児奇形の報告もあるため、摂りすぎには注意です。
しかしながら、主に植物性食品に含まれるプロビタミンAである、βカロテン・αカロテンなどからのビタミンAへの変換は厳密に行われているため、βカロテンの過剰摂取による過剰障害は、胎児奇形も含めて知られていません。

妊娠時の摂取推奨量
初期・中期:650μgRE/日
末期:730μgRE/日※上限量3000μgRE/日
含まれる主な食品(100g中)
  • 鶏レバー(14000μg)
  • うなぎ(かば焼き1500μg)
  • 豆苗(生390μgRE)
  • オクラ(ゆで60μgRE)
  • 小松菜(ゆで260μgRE)

※μgREとは、植物性食品などに含まれているβカロテンの量を、レチノール(ビタミンA)の量に換算したもの

妊娠中避けたほうがいいもの

塩分

塩分の摂りすぎは妊娠高血圧症候群の原因となります。
これは妊娠中毒症とも呼ばれ、妊娠7~8ヶ月以降の後期に約1割の妊婦に発生します。
主な症状は高血圧・蛋白尿で、重症化した場合には母子ともに危険を伴うことがあるため、注意が必要です。
※妊娠中の塩分目標量:7~8g以下

アルコール

アルコールは胎盤を通過するため胎児に移行します。
これにより、胎児アルコール症候群(FAS)と呼ばれる先天的な神経系脳障害になるリスクがあります。

ナチュラルチーズ・生ハム・スモークサーモンetc

「リステリア菌」による食中毒の危険があり、妊婦はこのリステリア菌に感染しやすく、胎児に悪影響を与えるリスクがあります。

カフェイン

主にコーヒーや緑茶、紅茶、コーラ、チョコレートに含まれています。
大量に摂取すると胎盤への血流を悪くし、胎児に酸素や栄養が届きにくくなるだけでなく、流産のリスクにもつながります。
少量であれば影響は少ないとされていますが、極力避けたほうが望ましいでしょう。

水銀

魚の中には水銀を多く含むものがあります。これが胎児の中枢神経に影響を与えることがあります。

水銀を多く含む魚の一例とその摂取の目安
  • クロマグロ
  • 金目鯛
  • メバチ
  • クジラ
1回約80gを1週間に1回まで
  • キダイ
  • マカジキ
  • ユメカサゴ
  • イシイルカ
1回約80gを週2回まで

妊娠中に必要な栄養はたくさんありますが、これはその中の一部です。
それに、これらが必要だからと言って、そればっかり食べていては逆に健康を損なってしまう恐れもあります。
バランス良く食事を摂るように心掛けることが一番重要です。