咳が続く要因はいろいろあります。風邪などの軽度な病気が要因のものから、放置してはいけない、深刻な感染症が要因の咳までいろいろなタイプの咳があります。
3週間以上続く咳の要因にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。
咳を出させる3つの部位
咳を出させる主な部位としては、鼻や喉と、気管支や肺、胃腸に大別されます。
- 鼻や喉
- カゼやインフルエンザなど。
- 気管支や肺
- 咳喘息・喘息・肺炎・肺結核・マイコプラズマ肺炎・百日咳・肺がんなど
- 胃腸
- 逆流性食道炎など
次に、疾患別に分類してみましょう。
大別すると喘息などのアレルギー性疾患、肺結核やマイコプラズマ肺炎などの感染症による疾患、肺がんなどの疾患に分けられます。
アレルギーが原因の長引く咳
咳喘息・喘息
慢性的に咳が続く代表的な疾患。
炎症により気道は敏感になり、冷たい空気やタバコの煙など、ちょっとした刺激で発作が起こります。
長引くカゼの咳と咳喘息の咳は混同されやすいが、咳喘息の原因はアレルギー体質にあるため、痰はほとんどなく、あっても白色で少しだけ。明け方になると咳が酷くなる特徴があります。
治療方法としては、吸入ステロイド薬で気道の炎症を抑えることがもっとも大切です。
発作が出た時は、即効性のある吸入気管支拡張薬を用います。
感染症が原因の咳
肺結核
肺結核というと、過去の疾患のように思われる方も多いと思いますが、現在でも年間2万人以上の新規患者が出ています。
吸い込んだ結核菌が肺で増殖することで発症します。
しかし、感染しても80~90%の人は発症しません。
感染後、数ヶ月から1年ぐらいで、微熱など風邪に似た症状が出ます。
治療方法は抗結核薬を中心に治療されるのが一般的です。
症状が強い場合は入院が必要になります。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマという細菌に感染することで発症します。
冬に流行する傾向があります。
患者の8割は子供ですが、最近30~40代でも急増しています。
まず、38度程度の発熱から、だるさ、頭痛といった症状が出た後、痰がからまない咳が出ます。
この咳が解熱後も3~4週間続くことが特徴です。
治療方法はマクロライド系の抗生物質を服用します。
咳が激しい場合は鎮咳薬を服用します。
百日咳
百日咳菌の感染で起こる急性の呼吸器感染症です。
潜伏期間は5日から、最大3週間。発熱は少なく痰の少ない激しい咳が特徴です。
咳きこんだ後、息を吸い込む時に「ヒュー」と音のする咳が出ることもあります。咳は3ヶ月ほど(百日)続きます。
最近は大人の感染者が急増しています。
子供の頃に摂取したワクチンの免疫効果が失われることが原因です。
また、大人は比較的軽度な症状なので、放置した大人から子供への感染が問題になります。
治療方法は抗生物質を服用し、2週間の継続服用で完治となります。
その他の病気が原因の咳
慢性気管支炎/COPD
慢性気管支炎は、気管支炎のうち、痰を伴う咳が1年間で3ヶ月以上続く状態が2年以上継続している状態を言います。
因子としては喫煙、大気汚染などがあげられます。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、この慢性気管支炎と肺気腫(血液に酸素を供給し二酸化炭素を排出する肺胞が破壊される病気)を併発している状態。乾いた咳が出るのが特徴です。
肺胞と気管支が破壊されるため呼吸がうまく出来ず、ちょっと体を動かしただけでも息切れがして、日常生活に支障をきたします。
20年以上喫煙を続けてきた人に多く発症するなどの喫煙との関連が深いため、肺の生活習慣病とも言われ、日本人の死亡原因の上位にもあげられる疾患です。
治療方法は、肺胞は元に戻らないので、症状を改善するための治療が主になります。
まずは、禁煙が必要です。
また気管支拡張剤による治療や、吸入薬での治療、在宅酸素療法、呼吸リハビリテーションなどがあります。
胃食道逆流症/GERD
胃食道逆流症は、胃酸や消化途中の食べ物が食道に逆流することで、胸やけや胸の痛みが生じる病気です。
逆流を繰り返し、食道に炎症が生じると逆流性食道炎になります。
食道にも咳中枢を刺激する部位があるため、咳が出ます。
胃酸の増える食後に咳がひどくなるようなら、GERDが咳の原因の可能性が高いと言えます。
治療方法は胃酸の分泌を抑える薬剤を服用します。
また、食べ過ぎや、寝る前の食事も症状につながるので、
- 夕食を寝る3時間前には食べ終わる
- 食べ過ぎを防ぐ
などでも症状が治まることがあります。
胃酸を増やす脂肪分の多い食事や、チョコレート、喫煙、飲酒もリスク要因となります。
肥満や、ひどい便秘による腹圧の上昇でも症状が現れる場合がありますので、これを改善することも症状改善につながります。
肺がん
呼吸器の病気で最も死亡率が高く、近年、女性にも増えています。
特に煙草や、煙草から出る副流煙がリスク要因です。
肺は血流の通過量が多いので転移しやすいがんと言えるが、早期発見では治癒が可能です。
レントゲンで早期のがんは発見しにくいので、加齢や喫煙などのリスク因子がある人はCT検査を定期的に受けることが、早期発見につながります。
治療方法は、がんの種別、進行度により異なります。一般的には手術、放射線治療、化学療法などがあります。
心因性ストレスなど
心因性ストレスなどが要因の咳もあります。また、不眠症を伴うこともあります。
心因性の咳は心身が緊張状態にある昼間にひどくなります。
心身のリラックスが大切なので、熟睡感を得られるだけで咳が止まることもあります。
不眠症がひどい場合は入眠剤を処方してもらっても良いでしょう。
また、環境の変化がストレス要因となる場合もあります。
低気圧では、自律神経の副交感神経が優位となり、気管支が収縮するため咳が出やすくなります。
また、気温の変化がストレス要因となり咳が出る場合があります。
しかし、季節の変化は避けることの出来ない要因ですので、体力づくりや、体調が悪くなった場合の自己対処法の確立などが症状の改善に有効です。
このように、長引く咳にはさまざまな要因がありますので、医療機関を受診し、咳の要因を突き止め、適切な処置を行うことが大切になります。