脱水状態 -2011年4月30日掲載-

私たちが生きていく上で欠かせないのが「水」です。

水は血液の主成分として体中を巡り、代謝を促し、汗や尿となって老廃物を排出し、蒸発して体温を調節します。この水は、実に体の約60%を占めていますが、その割合は年齢によって違います。

生まれた時は約80%、成人になると男性約60%・女性約55%にまで減少します。さらに60歳を超えると、約50%まで水分量が落ちてしまいます。赤ちゃんの肌がみずみずしいのは、こういう理由があるのです。

からだの水分は生命活動に欠かせません。たくさん汗をかいた後や下痢やおう吐を起こした場合、多くの水分と電解質が失われてしまいます。すぐに水分と電解質を補わないと体液のバランスが崩れ、体に大きな変調が現れます。

それが「脱水状態」です。

体の水分は、3%以上失われると様々な症状が現れます。10%以上失うと、入院しなくてはならない場合が多くなります。

さらに進めば命にも関わります。また、体内の水分が不足すると血液が濃くなって血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などを招く危険性があります。

経口補水液

ORS(Oral Rehydration Solution:経口補水液)は、水分と電解質をすばやく補給できるようにナトリウムとブドウ糖の濃度を調整した飲料です。

WHO(World Health Organization:世界保健機関)は、1970年代にコレラ感染による下痢に伴う脱水状態時にORSの使用を推奨して以来、発展途上国を中心に大きな成果を上げました。その後の臨床研究に基づき、2002年にナトリウムとブドウ糖の濃度を下げた新しいORS組成を公表し、成人と小児のコレラ患者への使用を推奨しています。

これと平行して欧米各国でも数次にわたりORSに関するガイドラインが策定され、2003年にはCDC(米国疾病管理予防センター)が「小児における急性胃腸炎の治療-経口補水、維持および栄養学的療法」)と題した最新のナショナルガイドラインを発表し、軽度から中等度までの脱水状態への使用を推奨しています。

高熱による発熱や下痢などで、ひどい脱水状態を起こしたときは水分補給がかかせませんが、補給する水分を選ぶことが大切です。 体内の水は塩分(電解質)を含んでいるので、ただの水を補給すると薄まってしまうのです。

脱水から回復するためには、脱水の原因を取り除くことはもちろん、失われた水分と電解質を補給することが望まれます。

経口補水療法って何?

経口補水療法という考え方

軽度から中等度の脱水状態時の対応として、経口補水液を飲むという療法があります。これが最近注目をあびている「経口補水療法」です。

なぜ水分吸収に優れているのか

脱水とは、水分だけでなく電解質(NaCl=塩分、K=カリウム)も失われる
ことです。脱水状態に陥った時、水だけを補給しても電解質を補うことが出来
ません。

経口補水液には、数種類の電解質とブドウ糖などがバランス良く含まれてい
ます。重要な電解質であるナトリウムイオンは、適度のブドウ糖がある方が
からだに取り込まれやすくなります。そして大切なのは、その比率。

経口補水液の場合、ちょうど良いバランスで作られています。だから吸収に
優れているのです。

特別な器具や技術は不要

経口補水療法は、失った分を失った分だけ補ってあげるのが基本的な考え方で、点滴のような特別な器具や技術は不要です。状態が安定していて口から飲める場合は、この経口補水療法が適していることがありますので、医師にご相談ください。

脱水状態になったからといって、あわてて一度にたくさん飲むと余計におう吐してしまう場合がありますので注意が必要です。

弱った体に負担をかけないように、少しずつ、ゆっくり時間をかけて飲んでいきます。

経口補水液の主な働きは水分と電解質の補給です。おう吐や下痢など、食事も充分に摂れない場合は、経口補水液を摂った後、様子をみながら栄養分も摂取すれば良いでしょう。

経口補水液の使用に際しては、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士にご相談しましょう。