-2011年2月28日掲載-

痔とは

肛門周辺の病気を総称したものを痔と呼び、生活習慣病の一つです。主に痔核、裂肛、痔瘻が、三大症状として挙げられます。男性・女性とも5割以上が痔核を占めますが、男性においては二番目に多いのが痔瘻 (18%) であり、裂肛 (9%) と続きます。また、女性においては二番目が裂肛 (15%) であり、次に痔瘻 (5%) となります。

痔の症状

痔核

肛門管周囲に発生した静脈瘤様の腫瘤のことで、いわゆる「いぼ痔」のことです。歯状線の直腸側の粘膜(内側)に発生しているものを内痔核、肛門側の皮膚組織(外側)に発生するものを外痔核と呼びます。内痔核は痛みが少なく出血(鮮血)や脱出を伴います。これに対して外痔核は出血は少ないのですが、痛みを伴うのが特徴です。

裂肛

硬い便が肛門を通過する時に、肛門管上皮が断裂したもの、いわゆる「切れ痔」のことで、排便時に痛みと少量の出血を伴います。

痔瘻

肛門周囲膿瘍の膿が出た後に、肛門周囲皮膚、肛門管に瘻孔(トンネル)を形成したものを痔瘻と呼びます。

主な原因

  • 誤った排便スタイル(便意の我慢や強いいきみ、肛門部の不衛生、長くトイレに座る)
  • 便秘や下痢
  • 妊娠・出産
  • 香辛料・脂っこいもの・生もの・アルコール・冷たいものの摂り過ぎ
  • 長時間の座りっぱなしや立ちっぱなし
  • 重い荷物を持って長時間歩く
  • 運動不足
  • 冷え、疲労、ストレス

治療方法

薬物治療

痔の出血・腫れ・痒みなどを治す坐薬や軟膏などの外用薬、および微小循環の改善や便通を整える内服薬を使用します。

外科治療

症状が重くなってくると、痔核などを切除する外科的手法が行われます。しかし最近では痔核の治療においては、ALTA注 (ジオン注) と呼ばれる注射療法が行われるようになり、痔核を切らずに治すことができ、入院期間の短縮及び医療費の削減など患者様の負担削減が可能となっております。

日常生活

  • 排便は無理に出すのではなく、便意が生じたときにトイレに行くようにして、あまりいきまず、2~3分ですますようにする。
  • 野菜や芋類などの食物繊維が多いものや穀類・豆類・きのこ類を食べるようにする。
  • うなぎやアーモンドなど、血行促進作用のあるビタミンEを多く含むものを食べる。
  • 腸内の環境を整えるためにもビフィズス菌入りの飲料や食品を摂取するようにする。
  • 水分を多く摂るようにして便秘にならないようにする。1日約1.5L~2Lの水分を摂るようにしましょう。
  • アルコールやトウガラシ・胡椒などの香辛料・刺激物は控えるようにする。
  • 洗浄器付きの便座でおしりを清潔にする。洗浄後、紙で軽く拭くのが理想的。
  • お風呂で湯船にゆっくり・じっくりつかり、身体を温める。
  • 同じ姿勢を長時間続けないようにする。
  • ウォーキングや水泳などおしりに負担をかけない運動を心掛ける。

受診は早めに

痔の疾患はどうしても恥ずかしいと思いがちになり、治療をすることに抵抗を感じる方も多いと思います。しかし、症状をそのままにしておくと余計に悪化するだけで、外科的治療が必要になってくることもあります。早い段階で病院に受診していただければ薬や生活習慣の改善だけで治ることも多いので、痔の症状が気になりだしましたら早めにお近くの病院を受診しましょう。

参考文献:肛門部疾患診療最前線 編集:寺本龍生 出版社:診断と治療社
病気がみえる vol.1 消化器 出版社:メディックメディア
いぼ痔注射療法 国本正雄・安部達也・鉢呂芳一共著 出版社:ハート出版
集英社健康百科(危ない現代病30)‐気になる痔‐
参考サイト:医療法人健康会 くにもと病院