認知症とは
認知症は「後天的な知能低下により日常生活障害が生じた状態、または最終的には日常生活障害を生じさせる疾患」と定義されています。現在、アルツハイマー病、レヴィー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症が4大認知症疾患とされています。
認知症の症状
認知症は通常徐々に悪化するのが典型的です。しかし、症状が進む速さは原因によって変わってきます。また個人差もあります。いつの間にか始まって時間をかけて悪化していくため、発症した日を特定することはできません。
認知症が悪化すると時間の経過を追う能力と、人や場所や物を見分ける能力が低下します。感情の変化は予想がつかず、浮き沈みが激しくなります。人格の変化や睡眠のパターンも異常になってきます。また、行動をうまく抑制できないために、わめく、物を投げる、たたく、徘徊するなど周りの人を戸惑わせることもあります。
最終的には、会話を続けられなくなり、話が出来なくなります。最も症状が進むと脳の機能がほぼ完全に破壊され、多くの人が寝たきりになります。
診断方法
診断は、本人や家族に一連の質問を行い、精神状態を調べるために物の名前を言う、短いリストに並べられた項目を暗記して思い出す等、簡単な作業と質問からなるテストが行なわれます。また、年齢、家族歴、症状の発症や進行状況、神経学的検査、脳卒中による脳損傷、アルコール依存などの別の疾患の有無についても行なわれます。
認知症の治療方法
治療として現在は、どのような治療を行なっても精神機能の回復はまず望めません。しかし、症状を悪化させている病気を治すことで、機能低下の進行を遅らせることはできます。
また、近年、認知症の早期発見、早期治療が非常に重要になっていることが分かってきています。近い将来、認知症の状態になる可能性が高いと予想される症状として、以下のものがあります。
- 自発性低下
- 易怒性(以前に比べ怒りっぽい)
- 空間の認知障害
- 遂行機能障害(物事を計画する際に、いくつかの行為を順序立ててまとまりのある行動にすること。具体的には、部屋の片付けや、献立を決めて、必要人数分の買い物をして料理を作ることなど。)
- せん妄を起こしやすいこと
日常生活で以前よりイライラすることが多くなった、最近物忘れがひどくなった、等の症状があれば物忘れ外来や精神科を受診するようにしていくことが大事です。
療養のための環境を整えることも非常に大切な治療になります。軽度から中等度の認知症患者は、慣れた環境にいるときが最も精神機能が良いため、通常は自宅で療養できます。ストレスの少ない活動を、毎日規則正しく行なうようにスケジュールを組んであげると、自立していると感じられるようになります。
また、趣味や、最近の関心事、読書などの精神活動を続けるように励ましていくことも必要です。毎日の決まった行動を単純にして、患者には現実的な期待をもち、患者が威厳と自尊心を維持できるようにすることが大事です。
参考文献:クレデンシャル、メルクマニュアル医学百科(日経BP社)