現在の高血圧治療指針 -2009年8月1日掲載-

日本の高血圧患者は、現在約4000万人といわれていますが、急速に高齢化が進んでおり、今後も高血圧と診断される方が増えると予想されます。高血圧は心血管病、特に脳卒中の最大の危険因子で、その予防・治療は重要な課題です。また、日本においてはメタボリックシンドロームや糖尿病の増加、さらには慢性腎臓病の増加などが問題となっていて、高血圧以外のリスクや他疾患も考えた高血圧治療が重要になってきます。

高血圧治療ガイドラインは、一般医師が日常診療で最も頻繁に診察する高血圧の患者様に対して、最適な治療を行なうことを目的として、2000年に公表されました。さらに2004年版を経て、2009年1月に「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」に改訂されました。

病気の治療は、治療を受けられる方やそのご家族も患っている病気について勉強することが大切です。これにより、望まれる治療計画が立てやすくなります。今回は高血圧の治療目標をご紹介します。

血圧値の評価

血圧の測定には、診察室での測定と、自由行動下および家庭血圧での測定があります。特に家庭での血圧測定は、白衣高血圧(診察室血圧が常に高血圧で、家庭血圧は常に正常である状態)や仮面高血圧(白衣高血圧とは逆の状態)の診断、高血圧の治療効果の判定に有効で、さらに治療継続を良好に保つうえでも重要です。

高血圧の基準値は、診察室血圧と家庭血圧で異なり、診察室血圧値は140/90mmHg以上、家庭血圧値は135/85mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。

治療の基本方針

高血圧治療の目的は、高血圧による心血管病の発症・進展および再発を抑制して、高血圧の患者様が充実した日常生活を送れるようにすることです。治療の対象はすべての高血圧で、糖尿病や慢性腎臓病、心筋梗塞後の場合は130/85mmHg以上が治療の対象になります。

降圧目標
症状 診察室血圧 家庭血圧
若年者・中年者 130/80mmHg未満 125/80mmHg未満
糖尿病・慢性腎臓病、
心筋梗塞後
130/80mmHg未満 125/75mmHg未満
脳血管障害、高齢者 140/90mmHg未満 135/85mmHg未満

降圧治療は、生活習慣の改善(第1段階)と、降圧薬による治療(第2段階)の2段階で行なわれます。低および中等リスクの場合には、生活習慣の改善を行ない、それぞれ一定期間後に血圧を再度測定して、140/90mmHg未満に血圧が下がらない場合には降圧薬による治療を開始します。高リスクの場合には、生活習慣の改善と併行して、すぐに降圧薬による治療を開始します。

生活習慣の改善は、以下のようなものがあります。

  • 塩分制限(6g/日未満)
  • 減量(BMIが25未満)
  • 運動療法(中等度の有酸素運動を毎日30分以上)
  • アルコール制限
  • 果物や野菜の摂取
  • 禁煙

降圧治療薬

降圧治療薬は以下のように用いられます。

  • 1日1回、低用量から開始します。24時間にわたって降圧することが重要ですので、1日2回の服用になることがあります。
  • 降圧目標を達成するためには多くの場合、いくつかの降圧薬の組み合わせ(併用療法)が必要となります。
  • 2種類の配合剤でお薬を単純化することで、治療継続・血圧のコントロールを改善できます。
  • 160~179/100~109mmHg以上の高血圧では、最初から併用療法になることがあります。
  • 初めの降圧薬でほとんど効果がなかった場合や副作用が出た場合には、別の降圧薬に変更します。
  • 数ヶ月かけて降圧目標を達成するくらいだと、副作用の心配も少なくなります。また、≧180/≧110mmHgの高血圧や、いくつものリスク因子(糖尿病、慢性腎臓病、臓器障害/心血管病など)がある場合は、なるべく早く降圧目標を達成できるよう検討します。

治療計画

降圧治療といっても、年齢や症状によって、治療方針や降圧目標は様々に異なります。

例えば、患者様がお年寄りの場合は、特に副作用に注意し、ゆっくりと血圧を下げていくようにします。また、患者様が妊婦さんの場合は、妊娠20週以降の高血圧と、妊娠前からの高血圧とを分けて考えます。

高血圧だからといって、闇雲にお薬を飲んだりせずに、医師の指示に従って血圧を下げていきましょう。
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