慢性関節リウマチ -2009年4月1日掲載-

慢性関節リウマチと聞いて、整形外科を想像する方も多いことと思いますが、実は免疫に関する内科系疾患です。

慢性関節リウマチ(RA)

慢性関節リウマチ(RA)は原因不明の全身性炎症疾患で、主な病変は慢性に経過する関節滑膜の炎症です。30‐50歳代の女性によく発症する疾患で、軽症のまま自然に改善する例もあれば、関節炎が長期間持続し、関節の変形・破壊をきたして高度の身体障害に至る例もあります。すなわち、その病状の経過が患者さんごとに大きく異なることがこの疾患の特徴です。

診断基準

リウマチと診断される基準としては、以下のようなものがあります。

「1987年に発表されたアメリカリウマチ協会の診断(分類)基準です。これは、

  1. 1時間以上の朝のこわばり
  2. 3か所以上の関節腫脹
  3. 手・手指の関節腫脹
  4. 対称性の関節腫脹
  5. リウマトイド結節
  6. リウマチ因子(RF)
  7. 特徴的なX線所見

の7項目中4項目でRAと診断する。なお、1-4は6週以上の持続が条件である。しかし、必ずしもこの基準のみに頼らず、持続性関節腫脹をみたときはRAを考えてみることも大切である。」

とされています。手・手指の腫れやこわばり、関節の腫張など、視覚的に捕らえられる症状から、患者様の多くは整形外科から受診をされることと思います。

治療

「リウマチは内科系疾患」と話を始めましたが、外科系、内科系では治療の方法が異なることがあります。

どちらも、薬物療法による保存的治療法が原則といったことは共通ですが、薬物療法は、抗リウマチ薬・非ステロイド性消炎鎮痛薬・ステロイドの組み合わせにより行われます。

数年前までの抗リウマチ薬では、リウマチの骨軟骨破壊を防止できる薬剤が開発されていませんでした。そこで長期的にリウマチの治療を行う場合、どうしても外科的治療が必要になる場合が多くみられました。

リウマチの外科的治療

リウマチの外科的治療には、大きく分けて炎症の場を切除する滑膜切除と、破壊された関節の機能を再建する機能再建術があります。そのほかに、頚椎や足関節では椎体や関節の固定術が行われます。各関節において関節の部位や関節破壊の進行の程度により、滑膜切除、人工関節置換術、関節固定術が適応となります。

リウマチの内科的治療

リウマチの内科的治療は、抗リウマチ薬非ステロイド性消炎鎮痛薬とステロイドの組み合わせにより行われます。今までは、関節の中で起こる、滑膜(かつまく)の炎症による関節破壊に対する治療薬がありませんでしたが、ここ数年の研究結果で、細胞間のコミュニケーションを行うサイトカインという物質が注目されるようになりました。
慢性関節リウマチ
サイトカインは機能的にも構造的にも多種多様で、免疫や炎症などさまざまなはたらきに関与していることがわかっています。その中のひとつに、TNF(腫瘍壊死因子)と呼ばれる物質があります。当初は腫瘍を殺すはたらきへの関与のみが知られていましたが、現在では免疫のはたらき全般に広く関係するものと理解されています。このTNFが、関節リウマチの炎症や痛み、さらには関節破壊にまで深くかかわっているのです。

関節リウマチ患者さんの体の中では、TNFが過剰に作られており、可溶性TNFレセプターとのバランスが崩れてしまうことになります。するとTNFのはたらきがとめられないため、関節の炎症をひき起こし、滑膜増殖や軟骨破壊などを促進させてしまうのです。

関節リウマチの病態に大きくかかわるTNFに直接はたらきかけるのが、抗TNF療法です。TNFが細胞表面のTNFレセプターと結合するのを阻止したり、TNFそのものが作用しないようにはたらきかけるのです。関節の炎症にかかわるTNFそれ自体をターゲットとし、炎症や痛み、そして関節破壊の進行を抑制することが特徴といえます。

抗TNF療法に使われる薬は、現在のところ、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)や他の抗リウマチ薬(DMARD)で十分な効果が得られなかった患者さんにのみ処方されます。高い効果が期待できますが、副作用には十分注意する必要があります。

リウマチの内科的治療は年々進歩を遂げています。リウマチで悩まれている患者さんは、整形外科だけでなく、一度、内科を受診しみてはいかがでしょうか?
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