慢性腎臓病について -2007年10月1日掲載-

慢性腎臓病をご存じでしょうか。たんぱく尿が出ているなど「尿検査などで腎臓に明らかに障害が認められる」または「中等度以上、腎臓の機能が低下している」の2つのうちどちらか、又は両方が3ヶ月以上続く状態のことで、これまで慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症、慢性間質性腎炎、痛風腎など、別々の病名がついていた慢性の腎臓病を総称して慢性腎臓病と呼びます。

腎臓の働き

ところで、腎臓とはどのようなものなのでしょうか。腎臓は腰あたりの位置にこぶし大の大きさで左右1対あります。血液から尿を作り、体内の老廃物を排泄したり、尿量を調節して体内の水分量を一定に保ったり、血圧を調整する因子を出したりしています。

慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病は腎臓の糸球体(血液をろ過して尿を作っている毛細血管のかたまり)が炎症などを起こしたり、糖尿病や高血圧などから腎臓に負荷がかかったりして起こります。腎臓の機能はある程度低下しても自覚症状はなかなか現れません。しかし、ある程度腎臓の機能が低下すると、むくみ、貧血、だるさ、吐き気、食欲低下などの症状が現れ、更に進行すると最終的には透析療法が必要になります。

慢性腎臓病の初期治療

慢性腎臓病と診断された場合、腎臓にかかる負荷を軽減するため、次のような治療が行われます。

たんぱく質制限

たんぱく尿がある程度以上出ていると腎臓の機能が悪化していると考えられます。たんぱく尿は腎臓の機能をさらに低下する原因にもなるため、食事から摂取するたんぱく質の量を制限したり、たんぱく尿を抑える作用も有する血圧降下剤を服用したりします。

血圧コントロール

血圧が高いと糸球体がダメージを受けやすいので、血圧を130/80mmHg未満で安定した状態で維持できるようにします。血圧を下げる為、食事から摂取する塩分の量を制限したり、血圧降下剤を服用したりします。また、肥満があると血圧上昇につながるため、適正な体重を心掛けましょう。目安としてはBMI{体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)}が25未満です。

血糖値コントロール

血糖コントロールが悪いと腎臓がダメージを受けやすいので、糖尿病の人は空腹時血糖値80~130未満、食後2時間血糖値80~180未満、HbA1c6.5未満に維持することが必要です。

薬による治療

血圧降下剤の中でも特にACE阻害薬やARBと呼ばれる種類の薬は糸球体にかかる過剰の圧力を下げ、たんぱく尿を減少させます。また、炎症が起きている場合はステロイド剤や免疫抑制剤を使い、炎症を抑えることも必要になります。

早期発見のために

慢性腎臓病
近年では、早期発見できれば透析へ移行する前に腎機能を回復できるようになりました。以下に該当する人は特に注意が必要で、6ヶ月に一度は尿検査を受けたほうがよいでしょう。

特に注意が必要な人

  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症・膠原病・肝炎・尿路の病気がある
  • 肥満
  • NSAID(消炎鎮痛解熱薬)を常用している
  • 家族に慢性腎臓病の人がいる
  • 高齢者

また健康な人でも、1年に1度は尿検査を受けた方がよいでしょう。発見が遅れると腎臓を健康な状態に戻すのが難しくなるため、早期発見し適切な治療を受けることが大切です。

慢性腎臓病は末期腎不全まで進行すると、透析や日々の食時制限などが必要になります。職場健診や住民健診などを利用し、定期的に尿検査を受け早期発見に努めましょう。また、慢性腎臓病と言われた方は、症状がなくても油断せず治療を受けるようにしましょう。