トイレが近く感じていませんか? -2007年9月1日掲載-

まだまだ夏の暑い季節が続きますがいかがお過ごしでしょうか?
これから秋を迎え少し過ごしやすくなり、行楽にお出かけされることも多くなるかもしれませんね。
しかし、お出かけのときなどにすぐトイレに行きたくなったり、普段でも真夜中に目が覚めてトイレに行ったりすることが多くなっていませんか?
これも年のせい、と自分に言い聞かせているかもしれませんが、ひょっとすると加齢のためだけではなく一つの病気かもしれません。

そこで質問です。

  1. 急に尿がしたくなって、我慢が難しいことがある?
  2. 尿をする回数が多い?
  3. 我慢ができずに尿をもらすことがある?

この1に該当すると過活動膀胱(OAB=Overactive Bladder)かもしれません。
さらに2と3にあてはまると、より可能性が高くなります。
トイレが近いのは加齢のためではなく、れっきとした病気であることがここ数年の研究で明らかになってきています。そして治療できる病気として扱われ始めています。
今まで諦めていた方も治療できる病気であることを知っていただきたいのです。
気になる方に自己チェックができる質問票があるので、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)
1 朝起きた時から寝る時までに、何回くらい尿をしましたか 7回以下 □0
8回~14回 □1
15回以上 □2
2 夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか 0回 □0
1回 □1
2回 □2
3回以上 □3
3 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか なし □0
週に1回より少ない □1
週に1回以上 □2
1日1回くらい □3
1日2~4回 □4
1日5回以上 □5
4 急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか なし □0
週に1回より少ない □1
週に1回以上 □2
1日1回くらい □3
1日2~4回 □4
1日5回以上 □5
  合計点数

質問3の点数が2点以上かつ全体の合計点数が3点以上であれば、過活動膀胱が強く疑われます。

3~5点以下
軽症
6~11点
中等症
12点以上
重症

過活動膀胱とは

過活動膀胱には主に次の3つの症状がありますが、尿意切迫感だけでも過活動膀胱と診断されます。

  • 尿意切迫感
  • 頻尿および夜間頻尿
  • 切迫性尿失禁

最近の調査では40歳以上の男性7人に1人(14.3%)、女性10人に1人(10.8%)の方が過活動膀胱であることがわかりました(推定約810万人)。この中で約半数の方に切迫性尿失禁があります。

この病気は男女を問わず加齢とともに増加すること、医療機関への受診率が18%と低いことがわかっています。

過活動膀胱になる原因

大きく2種類に分類されます。

神経因性 - 脳と膀胱の間の神経のトラブル

脳梗塞や脳卒中などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害の後遺症により、脳と膀胱(尿道)の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きると発病するとされています。

非神経因性 - それ以外の原因

前立腺肥大に伴うもの
50才以上の男性で多く見られます。
骨盤底筋のトラブル
女性の場合、出産や加齢によって、膀胱・子宮・尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなったり傷んだりすることで発病することがありえます。
その他
上記以外にも原因が特定できない場合があります。いくつかの原因が幾重にも重なり発病すると考えられています。この原因の特定できないものや加齢によるものが、実際には最も多く存在しています。

※80%以上が非神経因性ともいわれています。

生活習慣の改善

過剰な水分摂取をしない、カフェイン、アルコールの摂取を制限するなど日常生活から見直すことから始めてみるのはいかがでしょうか。

膀胱を訓練し排尿間隔を少しずつ延ばすことで、膀胱容量を増加させる訓練を行い、尿失禁を改善します。

お薬

治療の中心は薬物療法で、主に抗コリン薬を用います。
抗コリン薬とは神経終末から放出されるアセチルコリンの作用を阻害し、膀胱平滑筋(排尿筋)の不随意収縮を抑制するお薬です。

副作用は口渇、便秘などがあります。他には中枢神経障害、排尿障害などが知られています。また、眼圧が上昇する恐れがあるため緑内障の方は使用できないことがあります。

過活動膀胱治療に用いられる主な抗コリン薬の成分名

  • 酒石酸トルテロジン
  • コハク酸ソリフェナシン
  • 塩酸プロピベリン
  • 塩酸オキシブチニン
  • イミダフェナシン

注意点

前立腺肥大症が合併する過活動膀胱の方へ

過活動膀胱の薬物治療は主に抗コリン薬を用いますが、前立腺肥大症の患者に抗コリン薬を投与すると排尿困難が悪化する危険性があるため、前立腺肥大症を合併する場合は、前立腺・尿道平滑筋を弛緩させ排尿障害を改善する薬(α1遮断薬)が多く用いられます。また、この薬は蓄尿障害も改善することが報告されています。