アトピー性皮膚炎 -2006年10月1日掲載-

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、皮膚炎を起こしやすい体質的な素因を持った人に、ストレスやダニ・ほこりなどの悪化させる要素が加わることで発症する病気です。主な症状は強いかゆみを伴う、赤くブツブツとした湿疹で、よくなったり悪くなったりを繰り返します。

症状の現れやすい部位は年代によって異なりますが、一般に多くできる部位は、顔(目、耳、口の周りなど)や関節部(肘の内側や膝の裏側のしわの部分)です。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎にかかる人はアレルギー体質を持っています。アレルギー体質とはある物質に対して、特に過敏に反応して、皮膚炎や鼻炎、喘息、食物アレルギーなどを発症しやすい体質のことです。異物が体内に侵入した時に体内でつくられる「IgE抗体」というアレルギー反応のもとになる物質をつくりやすいことが原因です。

IgE抗体とは、アレルゲン(ダニや花粉などの異物)の侵入に対抗してつくられ、アレルゲンと反応して、免疫機能がアレルゲンを排除しやすくする働きをしています。

アトピー性皮膚炎の患者さんは、IgE抗体の割合が健常な人よりも多くなっています。

また、アトピー性皮膚炎のもう1つの原因として、ドライスキンがあげられます。健康な皮膚では表面が角層というさまざまな刺激から体を守る層で覆われ、角層の表面は皮脂で覆われ、体の中の水分が蒸発するのを防いでいます。そして、角質の細胞間はセラミドという脂質で満たされて、水分を保持しています。

しかし、ドライスキンではセラミドが少なく、皮脂の分泌量も少ないので、水分を保持する能力が低く、皮膚は乾燥した状態になっています。

角層全体の機能がうまく働かないため、外部からの刺激を直接受けて、アレルゲンを侵入させてしまい、アトピー性皮膚炎を発症しやすい状況をつくってしまっているのです。

スキンケア

アトピー性皮膚炎では皮膚をよい状態に保つことが大切です。汚れた皮膚を清潔にし、乾燥している肌には水分をしっかり与え、ジクジクする湿疹には乾燥させるスキンケアをします。

アトピー性皮膚炎の原因の1つである「ドライスキン」では、皮膚が著しく乾燥します。また、細菌や有害な物質が体内に侵入するのを防いだり、水分が失われるのを防いだりするバリア機能が低下するために炎症が起きやすくなります。

スキンケアのポイント

入浴で皮膚を清潔にし、水分を与える

体を洗う時にはできれば低刺激の石鹸を使い、十分に泡立てて、泡で皮膚をやさしく洗い、石鹸の成分が皮膚に残らないように洗い流します。

またかゆみを増すほどの高温のお湯や、刺激を感じるような入浴剤は避けます。

保湿剤を入浴後5分以内に塗る

保湿剤を塗ることで水分が逃げていくのを防いでくれます。保湿剤は、湿疹ができている部位だけでなく、広めに塗るようにします。指先だけで塗るのではなく、手のひらを使って、体のしわに沿って広い範囲に塗ります。

日常生活の注意点

アトピー性皮膚炎の患者さんは、衣類や寝具など、皮膚に触れるものは清潔で刺激の少ないものにします。衣類では、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維が入ったものや、ウール素材のものなど皮膚を刺激するものはさけ、綿100%や木綿などの柔らかい素材のものなどを選ぶようにします。布団や毛布なども首に触れることがあるので綿のカバーをかけて使うようにするとよいでしょう。

また、皮膚は乾燥するとかゆみを生じます。かゆいとかいてしまいますが、かくことによって皮膚を傷つけてしまい、皮膚炎が悪化してしまいます。

ダニやほこり、カビなども悪化させる要素となるので、部屋の掃除や換気をこまめに行うことも必要です。
他にも、ストレスで悪化することもあります。アトピー性皮膚炎を悪化させないためにも、悪化要素を減らし、毎日規則正しい生活を送り、十分な睡眠をとり、リラックスして過ごすようにしましょう。

NHK「きょうの健康」2006年2月号 NHK出版