「白衣高血圧症」と「仮面高血圧症」 -2006年4月1日掲載-

血圧とは血液が血管の内壁を押す力のことで、高血圧症とは血圧を1~数週間測定しても正常よりも高い状態のときを言います。

病院などで高血圧症といわれるのは最高血圧が140mmHg以上、または、最低血圧が90mmHg以上のときです。

(高血圧治療ガイドラインでは高血圧を表1“成人における血圧値の分類”のように分類しています。また、すべての高血圧に対して表2 “生活習慣の修正”を推奨しています。)

表1.【成人における血圧値の分類】
分類 収縮期血圧(mmHg)   拡張期血圧(mmHg)
至適血圧 <120 かつ <80
正常血圧 <130 かつ <85
正常高値血圧 130~139 または 85~89
軽症高血圧 140~159 または 90~99
中等症高血圧 160~179 または 100~109
重症高血圧 ≧180 または ≧110
収縮期高血圧 ≧140 かつ <90
表2【生活習慣の修正】
食塩制限6g/日未満
野菜・果物の積極的摂取※
コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える
適正体重の維持:BMI(体重(Kg)÷[身長(m)×身長(m)] )で25を超えない
運動療法:心血管病のない高血圧患者が対象で、有酸素運動を毎日30分以上を目標に定期的に行う
アルコール制限:エタノールで男性は20~30mL/日以下、女性は10~20mL/日以下
禁煙

※ただし、野菜・果物の積極的摂取は、重篤な腎障害を伴うものでは、高K血症をきたす可能性があるので推奨されない。また、果物の積極的摂取は摂取カロリーの増加につながることがあるので、糖尿病患者では推奨されない。
高血圧症
今回は高血圧症の中でも「白衣高血圧症」と「仮面高血圧症」について考察しました。この2つの高血圧症は病院で測定する血圧と家で測定する血圧でギャップを生じます。白衣高血圧症は、病院などでは血圧が高いが家庭では正常な血圧を示します。病院に行き、白衣の人を見ると血圧が上がるという人はこの種類に入るのかもしれません。対して、仮面高血圧症は白衣高血圧症の逆で、病院などでは正常な血圧であるのに家で血圧を測ると高血圧を示します。

仮面高血圧で薬を服用していない人は、ヘビースモーカーや苛酷な労働に従事する人、仕事と家事をしている主婦、およびストレスを感じやすい人であることが多く、診察の待ち時間がリラックスする唯一の時間となり、診察時には血圧は下がり、見かけ上、正常な血圧になります。しかし、普段の日常生活に戻ると血圧は高い位置に戻ります。この人たちは生活習慣の管理を行なうことが大切であり、これが最大の治療法です。

仮面高血圧で薬を服用している人の中には、医師に言われたとおりに薬を服用しているにも関わらず、実際には降圧薬は効果が持続せず、深夜で効果が途切れてしまったために、夜間から早朝にかけて著しい高血圧になる人もいます。この場合は朝食前の血圧を医師に伝えることが大切です。

最後に、血圧が高い状態が長い期間続くほど、血管は厚く、硬くなっていきます。これが動脈硬化になり、心筋梗塞、眼底出血、脳梗塞、大動脈瘤などを引き起こす原因になります。また、心臓は高い血圧に負けないために無理をすることになり、心臓肥大を誘発し、その結果心不全になることもあります。血圧をしっかり管理する事が動脈硬化から起こる大きな病気にならない秘訣となります。

高血圧治療カイドライン2004
循環器病情報サービス(国立循環器病センター)