難聴について -2005年8月1日掲載-

難聴とは?

難聴
難聴とは耳が聞こえにくくなることですが、聴力検査においては、ある一定以上の音がきこえない、あるいは聞こえにくい状態をいいます。音は耳を通して脳で認識されますが、その経路においていずれかの箇所に障害が起きても難聴になってしまいます。音を伝える部分に障害がある場合を「伝音難聴」といい、音を感じる部分に障害がある場合を「感音難聴」といいます。

難聴の原因

伝音難聴の主な原因としては、中耳炎が挙げられます。一番多いのは、滲出性中耳炎により中耳に水がたまってしまう事で、小児に多いのが特徴です。鼓膜の機能に障害が起きている事が多いです。

感音難聴の場合、鼓膜に異常はないですが、伝音難聴に比べ原因はいろいろあります。代表的な感音難聴としては、騒音性難聴、老人性難聴、突発性難聴が挙げられます。騒音性・老人性難聴は、それぞれ大きな騒音と加齢により、内耳の細胞が失われる事で起こります。

突発性難聴は、名前の通り、何の前触れもなく突然耳が聞こえなくなります。ほとんどが片側の耳だけに起こり、40~50歳代の働き盛りの年代に多く見られますが、原因は今のところよくわかっていません。

難聴の治療

伝音難聴に関しては、治療により症状が改善する可能性が高いです。中耳に水がたまっている場合、鼓膜を切開して、たまった滲出液を取り除く治療が行われます。又鼓膜に孔が開いてしまっている場合は、鼓膜形成術が行われます。伝音難聴はこのように手術などで聴力が改善する可能性が大きいですが、手術が無効な場合は補聴器などで聴力を補う事になります。感音難聴の騒音性・老人性難聴の場合は、失われた細胞を再生する事は出来ないので、補聴器が主に有効な手段になります。

突発性難聴は、早く治療を始めるほど、治療効果が大きく、聴力の回復も期待できます。しかし、発症から4週間以上たつと、障害を受けた細胞が元に戻らなくなって、聴力の回復は難しくなります。そのため、片側の耳が突然聞こえなくなったら、すぐに耳鼻咽喉科を受診する事が治療上大切なポイントです。

補聴器の選択

補聴器は、伝音難聴と感音難聴の両方に有効です。補聴器を使うと聴力が回復したように感じる事があるかもしれませんが、補聴器は外から入ってくる音を大きくする装置で、聴力自体を改善させる機能はありません。補聴器には大きく三つの種類がありますが、使用する人の聴力・操作性・使用目的によって選択する必要があります。

耳鼻咽喉科を受診すれば、治療の必要性の判断をした上で補聴器の選択も適切に行えます。医療機関では聴力検査を行いますが、それにより難聴の原因や程度を把握できます。その他の検査結果と患者さんの希望を踏まえて、補聴器を選択します。その過程では専門家と相談しながら、音量・音質を調整していき、一番適切な補聴器を見つけていきます。また補聴器を使用しても改善しない高度な難聴の場合は、「人工内耳」という装置を使用する方法もあります。

日常生活の工夫

難聴の患者さんは、日々さまざまなトラブルに遭遇する可能性があります。補聴器はそのトラブル回避の為の代表的な機器ですが、他にもさまざまな機器があります。視覚・触覚を利用する機器として、音の発生に連動して光や振動を発生するものがあります。このように生活上の補助機器を利用して、コミュニケーションを積極的にとっていくことも大事になってきます。コミュニケーションをスムーズに図るためには、周囲の方の理解や協力も欠かせません。
NHK「きょうの健康」 2003年3月号 NHK出版