薬の散歩道 -2012年7月31日掲載-

いつもフラワー通信をご覧いただきありがとうございます。私たちは少しでも皆様の健康な生活を支えることが出来ればと思い、薬や健康に関する情報を提供しております。

今回は、お薬に関する一般的なお話を二つ。

薬は必要?

どんな薬でも良い面(効果)と悪い面(副作用)を持っています。
薬を使わなくて済むのなら、もちろんそれに越したことはありません。

それでは、薬が必要な時というのはどのような場合でしょうか。

治療方針を検討するとき、医師(専門家)は「患者様にとってどれぐらいプラス面とマイナス面があるのか」、「治療しない場合はどうなるか」というような事を考えているはずです。
「薬が必要な時」とは、薬を使うことでプラス面が一番大きく、マイナス面が少ないと判断される時ではないでしょうか。薬を使えば、悪い面(副作用)が起きる可能性は確かにあるかもしれませんが、他の治療法や治療しないことを選べば体にとって危険性がもっと大きくなると判断される時は、「薬は必要だ」というような判断になるでしょう。

薬は、決められた量よりも多く飲めば効果があるというものではありません。多く飲みすぎることで、悪い面(副作用)が現れる危険性もあります。役に立つ作用を有効に引き出す為には、指示された用法・用量をきちんと守りましょう。

薬は効くと思って飲めば効く?

ここは、とある薬局の調剤室です。


新人の薬剤師君が先輩薬剤師の指導の下、調剤をしています。
1枚の処方箋を手に取り、新人君が先輩薬剤師のところへ来ました。
「この方の処方ですが、整腸剤と制酸剤の混合処方で頓服、寝る前なのですが、1日3回服用でなくていいんでしょうか?」
処方箋を受け取った先輩薬剤師が言いました。
「これは睡眠剤の擬似薬だよ。この方はよく眠れるのに自分で眠れないと思い込んでおられる。だから、本当の睡眠剤は必要ないけれど、本人は睡眠剤が無ければ眠れないと訴えたんだね。だから主治医の先生がこの薬を処方されたんだよ」
「え?これで本当に効くんですか?」
「至ってよく眠れるっておっしゃってるよ」
先輩薬剤師の説明に新人君はポカンとしています。


このように、本来は何の変哲もない薬が効果を表すことをプラセボ効果と言います。
では何故、効果が出るのでしょうか?
薬は体の中に入るとその薬を受け入れる受容体(レセプター)に取り込まれます。そして、人間とは不思議なもので、この薬を飲むと効くんだと思うと、体の中で薬をより受け入れる体制が出来るんですね。つまり、受容体が増えてくるんです。そして受容体は効くと思うと増え、効かないと思うと増えないらしいんです。不思議でしょう。
ですから、薬は効くと思って飲めば効果が期待できることになりますね。

患者様が、ここで薬をもらうときっと良くなると思っていただける、そんな環境づくりを私達はしなければいけないんだと改めて思いました。