子宮頸がんの予防―ワクチンで予防― -2011年3月31日掲載-

子宮頸がんとは

子宮は、子宮の入り口付近の「子宮頸部」と奥の「子宮体部」に分けられます。このうち子宮頸部に発生するがんを「子宮頸がん」、子宮体部に発生するがんを「子宮体がん」といいます。

ふつう「がん」といえば、中高年の人に発生すると考えがちですが、子宮頸がんは30歳~40歳代の女性に多く、若い世代に注意が必要です。

子宮頸がんの原因は「ヒトパピローマウイルス」というウイルスの感染によって発生します。ヒトパピローマウイルスの感染経路は、主に、性交渉です。性体験のある女性のおよそ8割が少なくとも一度はこのウイルスに感染したことがあるといわれます。

しかし、ヒトパピローマウイルスに感染しても、直ちにがん化が進むというわけではありません。約90%のケースでは免疫の働きによって、ウイルスが排除され感染は一過性に終わります。排除されなかった残りの10%のケースで、がんになる前の状態の「異形成」を作ります。そのほとんどが、自然にもとに戻りますが、そのうちの10%が感染を持続し、がんを発症するのはそのさらに10%以下です。

感染して、発症する確率は、およそ1000分の1ということになります。ただしこのウイルスはいったん免疫の働きで、排除されても、感染を繰り返しやすいという特徴があります。

ワクチンで予防


子宮頸がんの原因となる、ヒトパピロ-マウイルスの感染を予防するワクチンが開発され、世界の100カ国以上で、ワクチンの接種が実施されています。

ワクチンはヒトパピローマウイルスの「にせウイルス」を、人工的につくり、これを体内に入れて、抗体を作ることで、実際のウイルスに感染することを防ぎます。「にせウイルス」は外側の殻はヒトパピローマウイルスと同じでも、中にはウイルスの遺伝子がないので、ワクチン接種によって感染し、がんが発症するという心配はまったくありません。

ワクチンの効果は最低でも20年以上続くと推定されています。ワクチンの接種が普及することで、子宮頸がんの発症数を現在の3割以下にまで、減らすことができるのではないかと考えられています。

ただしこのワクチンには治療効果はないので、すでにウイルスに感染している場合に、それを排除することはできません。またこのワクチンの効果がないウイルスの型もあるため、「子宮頸がん検診」を定期的に受けることが必要です。

ワクチン接種の実際

ワクチンは上腕部に筋肉注射で、接種します。接種は半年間で、3回行います。3回接種することによって、十分な抗体が得られ、感染予防の効果が高まります。ワクチンは性交渉を体験する前に接種するのが最も効果的とされ、小学6年生~中学3年生くらいに接種することが推奨されています。次に効果が期待できるとされるのは、15~45歳の女性です。

ワクチンの副作用は、一般的なワクチン接種時と同じような、「注射した部位が痛い」「腫れる」「発疹」「発熱」「食欲不振」「倦怠感」「失神」などが一時的に見られることがあります。このワクチンに限って現れる副作用はありません。

ワクチンの接種は健康保険の対象ではなく、自費で受けた場合、3回で、4万~6万円程度の費用がかかります。全国の自治体の約3割が、ワクチン接種になんらかの、助成を行っています。