高齢者の薬と副作用 -2008年5月1日掲載-

年齢とともに体の機能は変化し、薬に様々な影響を及ぼします。特に高齢者では、薬を分解したり排泄したりする肝臓や腎臓の機能が低下するため薬が体に残りやすくなり、強く効きすぎたり、副作用が現れやすくなったりします。一方、胃酸の分泌の減少や、胃腸の働きの低下で薬の吸収が悪くなると、効果が弱まる場合もあります。さらに、唾液の分泌が減ると薬の飲み込みが悪くなり、服薬そのものが問題となります。

このような生理的な変化に加え、高齢者では複数の病気の治療により、多種類のお薬を服用することが多くなり、同系統の薬の重複や飲み合わせ(薬物相互作用)による副作用も起こりやすくなります。実際の調査でも、75歳を超える頃から副作用が増えるという結果が報告されています。

若年者にはたいして問題とならない副作用も、高齢者では日常生活の活動に大きな影響を及ぼし、生活の質を低下させることがあります。例えば、眠気によるふらつきの副作用が出るような薬では、転倒して骨折をおこし、寝たきりの原因になることがあります。また高齢者では薬の副作用でせん妄や幻覚といった認知症(痴呆症)に似た症状も現れやすくなります。せん妄・幻覚というのは現実に存在しないものが見えたり、聞こえたりする症状で、具体的には毛布や衣服の裾をまさぐる、壁のしみが人の顔に見える、時間や場所が認識できないといった状態です。一見、認知症を疑うような症状ですが、原因になっている薬を特定し減量あるいは中止することで症状は緩和されます。受診の際に医師に症状を伝えるようにしてください。

このように、高齢者の方では特有の副作用が出ることがあります。お薬の副作用で気になることがありましたら、かかりつけの薬剤師に相談してください。

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