動物由来感染症について -2017年4月28日掲載-

日本では、およそ3割の世帯がペットを飼育しているといわれています。
ペットを飼育すると、世話をすることで相手に対する思いやりや、相手の立場になって考えるようになる効果があります。子どもの感情や情緒を育む等、とてもメリットが多いともいわれます。

今回は、国内における主な動物由来感染症についてお話しいたします。


動物由来感染症とは動物から人にうつる病気のことです。動物由来感染症は、ヒトも動物も重症になるものや、動物は無症状で人は重症になるケース等様々です。
世界に目を向けると、SARSや鳥インフルエンザ、デング熱、エボラ出血熱など、社会問題化したことは記憶に新しいところです。
国内では、衛生環境が比較的良く、立地的に温暖で島国であることから、動物由来感染症が他国と比較して多いということはありません。
しかし近年、ペットが原因の動物由来感染数は増加しています。珍しいペットを飼うことによる種類の増加や、ペットとの距離が近くなっていることもその要因であると考えられます。

主な動物由来感染症

感染症名 菌保有動物・感染経路 主な症状
パスツレラ症 犬の75%・猫はほぼ100%が菌を保有しています。噛み傷やひっかき傷、キス等により経口感染します。 受傷部の激痛、発赤、腫脹のほか、軽い風邪のような症状から重篤な肺炎まで、呼吸器系症状を発現することがあります。
サルモネラ症 犬や猫・鳥・カメやイグアナ等が保有します。糞に含まれる細菌が原因で手や食品を介して経口感染します。爬虫類は動物との単純接触でも感染することがあります。 多くは急性胃腸炎(悪心、嘔吐、腹痛、下痢)を発現しますが、小児や高齢者は重症化しやすく、意識障害、痙攣および菌血症、急性脱水症を起こす場合があります。
猫ひっかき病 バルトネラ属の菌は、猫の10%が保有しているといわれます。猫や犬にひっかかれた傷口から細菌感染します。 受傷部の丘疹や膿疱、発熱、疼痛、リンパ節の腫脹。まれに、突然の痙攣発作や意識障害で脳症を併発します。
オウム病 オウム病クラミジアは、インコやハト・オウム等の鳥類が保有しています。口うつしでエサを与えたり、菌を保有する糞を吸い込んだりすることで感染します。 悪寒を伴う高熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛のほか、粘液性痰などの呼吸器症状が起こります。
狂犬病 犬だけでなく、猫や猿、ネズミ等も狂犬病ウイルスを保有することがあります。特に海外に行くとき等は注意が必要です。狂犬病ウイルスにさらされる前に、狂犬病の予防接種を受けるようにしましょう。 発熱、食欲不振、咬傷部位の痛みや掻痒感等の初期症状の後、麻痺・幻覚・精神錯乱などの神経症状、呼吸障害を発現します。一度発症すると有効な治療法がありません。

日常的な注意点

動物と接触すると、噛まれたり、つつかれたり、ひっかかれたりすることもよくあります。傷はたいしたことがなくとも、動物の歯や爪、唾液には細菌が多いので注意が必要です。動物を触ったら必ず手洗い等を行ってください。

また、ペットの爪切りやブラッシングも行いましょう。ケージやカゴ・小屋、及びシーツやペットの道具等、動物の生活空間においては細菌が増殖しやすいので、こまめに掃除しましょう。排泄物は早めに処理することも大事です。

怪我をした場合

動物による怪我などをしたら、以下の点をメモしてから病院に行くといいでしょう。

  • 傷の大きさや深さを測る(皮膚の症状を観察して腫れていないか、出血していないか、剥がれていないか)
  • 吐き気やけいれんなどのショック症状がないか
  • 犬や猫の場合、予防接種を行っているか
  • ヘビにかまれたら、ヘビの特徴を確認する

毒のある生き物に噛まれた場合は、急いで患者を病院に搬送しましょう。

人への感染症については医師が対応し、動物への感染症については獣医師が対応しますが、この動物由来感染症については、医師と獣医師が協力して対応することが大事です。

最後になりましたが、ペットにもかかりつけ病院を持ちましょう。飼い主とかかりつけ獣医師の信頼関係は重要です。かかりつけ獣医師に、日頃から飼育方法や動物感染症の予防方法や治療・予防接種など相談できる環境を作りましょう。