現代社会に急増する過敏性腸症候群
あなたは通勤や通学途中、また大事な仕事や試験の前、生活環境の変化などから急におなかが痛くなって、トイレに駆け込んだ経験はないでしょうか?そのような症状が長期間続いているなら、過敏性腸症候群かもしれません。
過敏性腸症候群とは、検査では異常がないにも関わらず、腹痛や腹部不快感を伴う便通異常(下痢や便秘)が繰り返し起こる病気です。10代~40代の若い人に多く、男性よりも女性に多いといわれていますが、最近は中高年層も多く見られ、人口の10~20%の人が過敏性腸症候群の症状をもっていると推測されます。
この病気の原因はストレスが関与していると考えられています。現代社会は、ストレスを感じることが多い社会です。最近、この病気で悩まれている方が増えてきているようです。
なぜストレスで下痢や便秘になるの?
脳と腸は神経によってつながっているため、脳が不安やストレスを受けると、その信号が腸に伝わり、腸の運動に影響を与えることがわかっています。過敏性腸症候群の方は、この信号が伝わりやすくなっているため、ストレスによって腸が過剰に反応してしまうのです。また、過敏性腸症候群の方は腸が痛みを感じやすくなっており、少しの刺激でも痛みを感じてしまうため、腸の過剰な運動で痛みを感じてしまいます。
このようにして起こった腹痛や便通異常がさらにストレスを増幅させ、症状が悪化するといった悪循環に陥ることになります。
過敏性腸症候群の分類
過敏性腸症候群は、4つのタイプに分類されます。
- 下痢型
- 「泥状便・水様便」が多いタイプ 男性に多い
- 便秘型
- 「硬い便・コロコロ便」が多いタイプ 女性に多い
- 混合型
- 「泥状態・水様便」になったり「硬い便・コロコロ便」になったりするタイプ
- その他
- 上記のどれにも当てはまらないもの
過敏性腸症候群チェックリスト
- 通勤や通学途中に急に便意や腹痛が起こりトイレに駆け込むことがある。
- 緊張を強いられる時(会議や試験など)におなかの調子が悪くなる。
- 排便によっておなかが楽になる。
- 排便後も残便感がある。
- 下痢や便秘が長期間続いている。
- 下痢・軟便が1日2~3回以上起こる。または、排便回数が減少したり、便が出にくかったりする。
- 腹痛、おなかが張る、おなかがなにか気持ち悪い、おなかが鳴るなどの症状がよくある。
おなか以外の症状
過敏性腸症候群は、上記のおなかの症状以外に全身性症状や不眠などの症状がでることがあります。
- 精神症状
- 不眠・不安感・抑うつなど
- 全身性症状
- 頭痛・頭重感・疲れやすい・めまい感・背部痛・肩こりなど
- 消化器症状
- 嘔気・嘔吐・食欲不振など
過敏性腸症候群の治療方法
過敏性腸症候群の治療は、主にライフスタイルの改善・薬物療法・心理療法を行います。
ライフスタイルの改善
食事
- 規則正しく、3食を決まった時間に摂りましょう。
- 暴飲・暴食を避け、胃腸に負担をかけないようにしましょう。
- 食物繊維の多い食品を摂りましょう。(ただし、おなかにガスがたまる場合には、豆類や根菜類は控えましょう。)
- 脂肪の多い食品は控えましょう。
- 特に便秘の多い人は刺激の強い食品(香辛料が多い食品など)、下痢の人は冷たい飲み物などを避けるようにしましょう。
- 便秘の人は、水分を多く摂りましょう。(1日1.5~2L)※ただし、水分制限の無い方に限ります。健康に心配な方は、医師に相談して下さい。
日常生活
- 喫煙を控えましょう。
- 十分な休息・睡眠をとりましょう。
- 規則正しい排便を心掛けましょう。(朝食後は、便意がなくてもトイレに行く習慣をつけましょう。逆に、便意があるのに我慢したりしないように。)
ストレス解消
- 散歩などの軽い運動を生活に取り入れましょう。(過度な運動は逆にストレスになります。)
- スポーツや趣味で気分転換を行い、ストレス解消を心掛けましょう。
薬物療法
過敏性腸症候群の治療薬は、下痢・便秘・腹痛などの症状にあわせて用いられますが、症状は人によって異なりますので、この薬さえあれば大丈夫というものはありません。薬の使用については、医師や薬剤師を始めとする医療従事者に相談するようにしましょう。
過敏性腸症候群の症状はすぐに治るわけではありませんので、効果が無いからといって途中で止めず、腰を据えて気長に治療を続けましょう。
心理療法
生きている限り、すべての人にストレスは存在しています。また自分ではストレスを感じていなくても、実際はストレスになっていることもあります。したがって、医師を始めとする医療従事者あるいはカウンセラーに悩みを相談し、ストレスへの対処を工夫する方法も行われます。
生活の質を向上させましょう
過敏性腸症候群は生命に関わる病気ではないので、不安になる必要はありません。しかし、電車や車の中で急に便意を催したり、会社や学校に遅れたり休んだり、外出を控えるようになったりと、生活の質を悪化させてしまう病気です。医療機関で適切な治療を受け、生活の質を向上させましょう。
長期間の便通異常は別の病気の可能性もあります。少しでも気になることがあるのでしたら、医療機関に受診してみてはどうでしょうか。
アステラス製薬「No More!下痢・便秘」パンフレット