最近、薬局で見かける患者さまとの会話
- 患者さま
- 「先生からはいつもと同じお薬を出しておくと聞いたのに見かけない名前のお薬が書いてあるのだけれど、間違ってない?」
- 薬剤師
- 「お薬の名前が変更になっていますが同じお薬です。」
- 薬剤師
- 「一般名で処方されています。先発品か後発品かを患者さまにお選びいただけますが、どちらがよろしいでしょうか?」
等々。
先発品・後発品(ジェネリック医薬品)などの言葉はTVコマーシャルでも時々見かけるので、耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。一般名という言葉はあまりご存じないかもしれません。さらに最近では、お薬の名称変更も頻繁に見られます。
医療機関で受診するたびに、何かお薬を飲んでいないか尋ねられると思います。薬局でも同様にお聞きして、「血圧のお薬飲んでいるよ」とか、「痛み止めをたまに飲むよ」とか、「○○という血圧のお薬1錠飲んでいるよ」、などとお答えいただくのですが、実は、それだけではどのお薬なのか?正確には分からない場合が多いのです。そこで、お薬の名前についてのお話を少ししたいと思います。
商品名と一般名
Aさんの事例
- 腰が痛くなって整形外科を受診しました。先生からは痛み止めのお薬を出しておきましょうと言われて、ロブ錠60mgが処方されました。
- 風邪を引いたかなと思い内科を受診しました。先生からは熱や痛みがあれば飲むようにとスリノフェン錠60mgが処方されました。
- 歯が痛くなって歯科を受診しました。先生から痛みが出たら飲むようにとロキソニン錠60mgが処方されました。
- 頭痛がするので、ドラッグストアーでロキソニンSを買いました。
Aさんが処方されたお薬、ロブ錠60mg・スリノフェン錠60mg・ロキソニン錠60mg、そしてドラッグストアーで購入したロキソニンS。これらは全て同じ有効成分のお薬です。お薬の効果は有効成分の量で決まります。有効成分の名前を表す名称が一般名と呼ばれるものです。この事例では、「ロキソプロフェンナトリウム水和物」60mgが一般名になります。ロブ錠60mg・スリノフェン錠60mg・ロキソニン錠60mg・ロキソニンSはそれぞれ販売しているメーカーが付けた商品名になります。
種別 | 名称 | |
---|---|---|
一般名 | ロキソプロフェンナトリウム水和物60mg | |
商品名 | 医療用医薬品 (処方箋が必要なお薬) |
(先発薬)ロキソニン錠60mg |
(後発薬)ロブ錠60mg | ||
(後発薬)スリノフェン錠60mg | ||
OTC医薬品 | ロキソニンS |
ロキソプロフェンナトリウム水和物60mgといえば、先ほどの全てのお薬が対象になりますが、商品名ではその商品名のお薬だけが対象になります。医師の処方箋によって患者さまに処方されるお薬は薬価基準収載品目といい、国から「そのお薬に対していくら保険で支払われるか」を決められて登録される必要があります。薬価基準にはそれぞれのお薬の商品名毎に収載されます。
ロキソプロフェンナトリウム水和物60mg1錠として収載されているお薬は、平成26年4月版の保険薬事典(薬価基準を収載した本)の中には25品目もあります。先ほど例に挙げたお薬では、ロキソニン錠60mg17.50円、スリノフェン錠60mg9.60円、ロブ錠60mg7.80円、ロキソニンS(薬価収載なし)となっています。ロキソニン錠60mgは先発品、スリノフェン錠60mg・ロブ錠60mgは後発品(ジェネリック医薬品)です。ロキソニンSはOTC医薬品と呼ばれ、処方箋なしで購入することが出来るお薬です。保険でお薬代が支払われることがないので薬価基準には収載されていません。
今までは後発医薬品(ジェネリック医薬品)に関してもメーカーが独自に商品名を付けてきました。そのため、同じ効き目のお薬にたくさんの商品名があり、専門家である薬剤師でさえ同じ成分のお薬だとすぐには分からないこともありました。そこで最近は、後発医薬品の商品名は一般名のあとにどこのメーカーかを示す記号やメーカー名を付ける形式に変わってきています。古くからある後発医薬品も、「一般名+メーカーを示す記号」に名称変更が行われてきています。そのような経緯もあり、処方箋に書かれるお薬の名前が変わっていることがあるのです。
先ほど、お薬の効き目は有効成分の量で決まるとお話ししました。ですから、事例に出てきたお薬は効き目に関しては全て同じです。医師が処方箋を記入する時には、商品名で記入しても一般名で記入しても良いことになっています。今までは商品名で記入されることが多かったのですが、最近は、後発品を使用されるケースが増えています。後発品の商品名で記入されると、薬局では同じ効き目のお薬を何種類も在庫する必要がありますので、すぐにはお薬を用意できない、ということも起こってしまいます。そこで、特に「どこのメーカーのお薬でも良いですよ」という場合には一般名で記入されることが多くなってきました。そのため、今まではロキソニン錠60mgと処方箋に記入されていたのが、(般)ロキソプロフェンナトリウム水和物60mgと記入される機会が増えてきて、見かけない名前を目にすることがあるのです。
一般名処方の場合、どこのメーカーのお薬を選ぶかは患者さまに選択権がありますので、希望のメーカーやなじみのお薬があれば遠慮なくおっしゃって下さい。在庫がない場合はお取り寄せになりますが、薬局では患者さまの希望に沿ってお薬を揃えさせていただきます。