これから大型連休を迎え、旅行、行楽にお出かけになることも多いかと思います。そんなときに乗り物酔いで辛い思いをするとせっかくの旅も台無しです。そこで今回は乗り物酔いがなぜ起こるか、どうすれば効果的に予防できるか、酔い止め薬の使い方などをお話ししたいと思います。
乗り物酔いの仕組み
船や車に乗って、普段あまり経験しない揺れなどが起こると気分が悪くなることがあります。このとき、体の中では視覚で感じる動きと三半規管で感じる動きとが不一致を起こし、自分が今どこでどういう位置に置かれているか正常に認識できない状態になっています。平衡感覚や視覚などが乱れると、自律神経が刺激され、自律神経の働きに乱れが生じます。自律神経は胃や心臓などの臓器の働きを支配しているため、この自律神経の乱れによって吐き気や動悸など乗り物酔いの症状が起こると考えられています。
その他、以前に乗り物酔いを起こした事を思い出したり、他の人が乗り物酔いを起こしているのを見て具合が悪くなったりする心理的な要因や、寝不足や体調不良などの身体的な要因が考えられます。
乗り物酔いの症状
冷や汗、めまい、頭痛などの前触れの症状に続いて、胃の不快感や心臓がドキドキするなどの症状が起こります。ひどくなると吐き気や嘔吐を起こします。
乗り物酔いを防止するには
乗り物酔いになりやすい方は、特に次の点に注意してください。
- 食べすぎ、飲みすぎ、空腹の状態で乗り物に乗るのは避ける。
- 乗り物の中で本を読んだりゲーム機で遊んだりしない。
- 乗り物に乗る前日は十分に休養を取り、体調を整える。
揺れの少ない席を選び、進行方向を向いて座る。(車は助手席、バスの場合は車の前方は後方より振動が少なく、よいとされています。) - 前の席の背を注視せず、窓の外の「前側の遠方の景色」を眺めるようにする。
- 車内の換気、空調に注意する。
- きついネクタイやベルト、着物など体を圧迫するような衣服は避ける。
乗り物酔いの薬について
乗り物酔いの薬には、以下の成分が含まれています。
(商品によって成分の種類、組み合わせは異なります)
- 1.めまいを抑える抗ヒスタミン薬
- (アレルギーのお薬にも含まれています)
- 例:d-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、メクリジン等
- 2.吐き気を抑える抗アセチルコリン剤
- (お腹のお薬に含まれていることがあります)
- 例:臭化水素酸スコポラミン
- 3.中枢神経を刺激して感覚の混乱を抑える中枢神経興奮薬
- 例:カフェイン、テオフィリン、アミノフィリン
注意点
一部のお薬では、症状が出てきてから服用しても効果のあるお薬もありますが、基本的には全て予防薬です。乗り物酔いになりやすい方は、乗り物にのる30~1時間前に服用するようにしてください。
乗り物酔いのお薬の大半1と2の成分を含んでいます。服用すると眠気を催すことがあるので、服用後は車の運転など危険を伴う行為は避けるようにしてください。また、緑内障で目の痛みやかすみのある方や、前立腺肥大の方は症状を悪化させるおそれがあるのでこれらのお薬は禁物です。
3の中枢神経興奮薬は、医療用では喘息の治療などに使用されています(カフェインを除く)。病院で使用する際には血液の中に含まれる薬の量を調べながら慎重に量を決めています。この成分を含む乗り物酔いのお薬はあまり種類がありませんが、誤った量を使用すると中毒を起こす恐れがあるので、用法用量を厳守して下さい。
また、乗り物酔いのお薬の成分と飲み合わせの悪いお薬も存在するので、何らかの治療を受けている方は必ず薬剤師に相談のうえ購入するようにしてください。
これら酔い止めのお薬は、普通の錠剤の他に、液剤や水なしで服用できるチュアブル錠なども発売されています。海外など飲み水に困るような地域に旅行される場合は、このようなタイプのものを購入するのがよいでしょう。