メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは、動脈硬化の危険因子(肥満、高脂血症、高血糖、高血圧)を複数併せもった状態です。なぜ起きるのでしょうか?
おなかの周りにたまった「内臓脂肪」が大きな原因です。内臓脂肪が過剰にたまるとアディポサイトカイン(脂肪から分泌される体のさまざまな機能を調節する物質)の分泌に異常が生じ、高脂血症や高血糖、高血圧などを引き起こします。こうした状態が続くと動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの病気を起こす危険が高まっていきます。
メタボリックシンドロームの診断基準
2005年4月にメタボリックシンドロームの診断基準が公表されました。
おへその高さの腹囲が基準となります。腹囲に加え、以下の内2つ以上当てはまる場合に診断されます。
- 血液中の脂質
- 空腹時血糖値
- 血圧
これらの基準は実際に高脂血症、糖尿病、高血圧と診断される基準に比べると低いですが、それぞれの症状は軽度でも複数重なると動脈硬化の危険を大きくするため厳しく設定されています。
おへその高さの腹囲・・・男性85cm以上、女性90cm以上
- 脂質
- 性脂肪(トリグリセリド)150mg/dl以上またはHDLコレステロール40mg/dl未満
- 空腹時血糖値
- 110mg/dl以上
- 血圧
- 収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上
内臓脂肪がたまると血糖値が上がるのは?
過剰にたまった脂肪細胞から大量のグリセロール(糖の原料)が肝臓へ送られます。肝臓で作られて血液中に出て行く糖が増えます。
過剰な内臓脂肪の蓄積によって脂肪からのアディポネクチンの分泌が減ります。(アディポネクチンはインスリンを活性化します。)インスリンの作用が弱まり血液中の糖が増えます。
内臓脂肪がたまると血圧が上がるのは?
過剰な内臓脂肪によってアディポネクチンの分泌が減ります。(アディポネクチンは血管内に硬くなりかけたところがないかパトロールしています。)すると、血管の修復ができなくなり動脈硬化が進んで血圧が上がります。
内臓脂肪の増加によりインスリンの働きが弱っています。すると、腎臓での塩分排泄が低下して血液中のナトリウムが増え、血液(水分)の量が増加し血圧が上がります。
過剰な内臓脂肪からアンジオテンシノーゲン(血管を収縮させる物質)が分泌され血管が収縮します。
内臓脂肪型肥満の特徴
外見上は太っていなくても内臓脂肪型肥満というケースはあります。内臓脂肪がたまるタイプの肥満は男性に多く、リンゴのようにお腹の周りだけポコッと出てきます。内臓脂肪はお腹の筋肉の内側についているため、ほとんどつかむことができません。
ただし、つかめるからといって内臓脂肪型肥満ではないという油断はできません。内臓脂肪型肥満の程度によっては皮下脂肪も増えていくためつかめることもあります。
内臓脂肪をためる生活とは?
食生活
- 満腹になるまで食べる。
- 緑黄色野菜は好まない。
- 甘い食品、飲物が好き。
- 夜食をよくとる。
身体活動
- 座り仕事が多い
- 歩行は1日1時間以内
内臓脂肪を減らす生活のヒント
内臓脂肪がたまった人の多くは、適正エネルギー以上の食事をとっています。内臓脂肪をためる生活とは逆に、食事は腹八分目、緑黄色野菜をとる、甘いものを控える、夜食を控えるといったことを心掛け1日3食規則正しくとりましょう。
運動する時間がとりづらい場合は、通勤やテレビを見る時間などを活用して体を動かしましょう。
心筋梗塞や狭心症、脳梗塞を予防するには内臓脂肪を減らすのがいちばんの近道です。
NHK「きょうの健康」 2006年1月号 NHK出版