ピロリ菌と除菌療法 -2008年3月1日掲載-

胃の中に住める細菌がいることをご存知ですか。胃には胃酸があるため、昔から細菌はいないと考えられてきました。しかし25年前、豪州の医師が胃に細菌のいることを発見しました。名前はヘリコバクター・ピロリ。通称ピロリ菌です。日本人のピロリ菌感染者は約6000万人といわれ、多くは40歳以上で若い世代には少ないことがわかっています。そのため感染の原因は衛生環境と関係しているのではないかと考えられています。

このピロリ菌ですが、感染すると胃に炎症を起こすことがわかっています。特に胃潰瘍や十二指腸潰瘍を繰り返す患者様ではピロリ菌の関与が大きいことが明らかになってきました。以前は胃潰瘍や十二指腸潰瘍は再発を繰り返す治療しにくい病気でしたが、ピロリ菌を退治するとほとんどの場合、再発が抑えられるようになりました。ピロリ菌の除菌に使用される薬は2種類の抗生物質と、胃酸を抑える薬です。これらの薬を1週間同時に服用するとほとんどの場合、ピロリ菌を退治することができます。しかし自分の判断でお薬を中止するとピロリ菌を退治できないばかりか、薬の効きにくいピロリ菌が現れたりすることがあります。

ピロリ菌の除菌療法で軟便や軽い下痢、また味覚がおかしいといった副作用が起こることがありますが、このような副作用が現れても服用回数や量を減らしたりすることはせず、お薬を続けて飲むようにしてください。ただし副作用がひどくなったり、気になる症状が現れた場合には必ず主治医や薬剤師に相談してください。ピロリ菌が陽性でも必ず胃潰瘍や十二指腸潰瘍になるわけではありません。このような疾患になるのはピロリ菌陽性の人の2~3%といわれます。しかし、胃の調子が悪いといった症状を繰り返す場合は、一度ピロリ菌の検査を受けてみてはいかがでしょうか。