自然毒の知識を高めよう~貝・フグの毒について~ -2018年3月30日掲載-

貝毒

潮干狩りに最適な時期は一般的に4~5月と言われています。

新鮮な貝を味わうことを楽しみにしている人も多いと思いますが、貝が持つ毒には十分注意しましょう。

貝毒とは「貝が作り出す毒」ではありません。光や水温など環境条件の変化により発生した有毒プランクトンを、二枚貝が餌として食べることで貝に毒素が蓄積します。その毒化した貝を食べた人が「食中毒」を発症してしまうというものです。

貝毒の種類

日本で問題となる貝毒には、有毒プランクトンの種類によって大きく麻痺性貝毒と下痢性貝毒の2種類がありますが、これ以外にも多種類の貝毒が知られています。

麻痺性貝毒

麻痺性貝毒は食後30分程度で軽度の麻痺がはじまり、麻痺は次第に全身に広がり、重症の場合には呼吸麻痺により死亡することがあります。貝の種類としてはアサリ、帆立貝、赤貝、ムラサキイガイ(ムール貝)、牡蠣などです。

下痢性貝毒

下痢性貝毒の主な症状は消化器系の障害で、下痢、吐気、嘔吐、腹痛が顕著です。症状は食後30分から4時間以内の短時間で起こり、回復は早く通常は3日以内に回復します。後遺症はなく、過去に死亡例もありません。貝の種類としてはムラサキイガイ、帆立貝などです。

他には、日本での症例はありませんが記憶喪失性貝毒、神経性貝毒などがあります。

こうした貝毒は外見からは見極めることはできず、また一般的な加熱調理では毒素は分解しません。日本では麻痺性貝毒・下痢性貝毒について規制値が設けられており、基準値を上回る貝は市販されません。しかし潮干狩りで採った貝は対象外です。食べる場合は厚生労働省や自治体のホームページ等で安全性を確認してから食べるようにしてください。

フグ毒

フグは体内に猛毒テトロドトキシンを持っています。このフグ毒を含む部位(有毒部位)を食べたことを原因とする食中毒(フグ中毒)が、全国で毎年発生しており、死者も出ています。毒力の強さはフグの種類および部位によって著しく異なりますが、一般的に肝臓、卵巣、皮の毒力が強いです。

フグの毒化のメカニズムは現在においても解明されていません。一部では、「養殖フグには毒がない」と言われており、自然界の食物連鎖によるフグ体内への毒素の蓄積が考えられているようです。しかし陸上生物を含むフグ以外の生物も、フグ毒の主成分であるテトロドトキシンを保有することがわかっており、たとえ陸上養殖のフグであっても、毒化する可能性は否定できていません。

フグ毒の症状は、食後20分から3時間程度の短時間でしびれや麻痺症状が現れます。麻痺症状は口唇から四肢、全身に広がり、重症の場合には呼吸困難で死亡することがあります。

フグの判別は素人では難しい上、食用可能な部位はフグの種類によって異なります。素人判断や素人によるフグの取扱い、調理は危険ですので絶対にやめましょう。また、まれにではありますが、スーパー等の店頭に毒性の強い部位が混入したまま販売されてしまうケースがありますのでご注意ください。