禁煙について考えてみませんか? -2017年7月31日掲載-

タバコは昔から“百害あって一利なし”と評されるように、健康にとってよくないものとされてきました。

タバコってどんなもの?

私たちがよく見かけるタバコは、本来、南米に自生するナス科の植物です。タバコに含まれるニコチンは、葉っぱが虫などにかじられた時に合成される、虫よけのような作用をもつ物質です。

習慣としてのタバコは、南米で原住民らが儀式などの際に使っていたものでした。15世紀にコロンブスが“新大陸”を発見した際、ヨーロッパはタバコと出会ったことになります。ヨーロッパとアメリカ大陸との行き来の中で、ヨーロッパへタバコと喫煙習慣がもたらされていきました。

日本にタバコが持ち込まれたのは16世紀江戸時代で、長崎・鹿児島などの説がありますが、タバコがはじめて栽培されたのは長崎市の教会(現在は石碑のみ)と言われています。それらの時期のタバコは、キセルやパイプなどに刻んだタバコを乗せて吸うものなどが主流で、道具を含め一部の人の習慣という色合いの強いものだったようです。

タバコの煙について

タバコの煙には、およそ4,000種類の化学物質が含まれています。その中には200種類以上の有害物質が含まれ、発がん性物質は50種類以上にのぼります。有害物質のなかでも、よく知られているのは、ニコチン、タール、一酸化炭素です。

喫煙習慣の本質はニコチン依存症です。平均的なタバコ1本には、麻薬と同じような強い依存性を持つニコチンが10~14mg含まれています。タバコは健康を損なう有害なものであることが分かっているのに、喫煙者はどうしてタバコを吸い続けるのでしょうか? それはタバコを吸うとニコチンが数秒で脳に到達し、快感を生じさせる物質を過剰に放出することが関係しています。ニコチンの作用による強い快感のために、「またタバコを吸いたい」という欲求が生まれるのです。この繰り返しがニコチン依存症につながっていきます。

タバコの健康被害

喫煙による健康被害

日本において、20歳未満でタバコを吸い始めた男性(1920~45年生まれ)の72%は70歳まで生存していましたが、タバコを吸わない男性の72%は78歳まで生存していました。つまり、タバコで余命が8年短くなったわけです。なお、同じように女性を調べると、タバコで余命が10年短くなっていました。

またタバコでがんになることはよく知られていますが、そのほかにも脳卒中や心筋梗塞、動脈硬化、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、胃潰瘍、COPD、肺炎、喘息、うつ病、バセドウ病、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、EDなど、全身の病気のリスクを高めることがわかっています。また病気のリスクだけでなく、妊娠・出産への悪影響や乳幼児突然死症候群の発症リスクにも関連してきます。

受動喫煙による健康被害

タバコに含まれる有害物質や発がん物質は、あなたの健康を奪うだけでなく、家族や友人、職場の同僚など、あなたの大切な人の健康も奪います。タバコはマナーや分煙では解決できない深刻な健康問題です。

タバコの煙には、喫煙者が吸う「主流煙」、喫煙者が吐き出した「呼出煙(こしゅつえん)」、タバコから立ち上る「副流煙」があり、受動喫煙ではこれらが混ざった中古の煙を吸わされていることになります。煙に含まれる発がん性物質などの有害成分は、主流煙より副流煙に多く含まれるものがあり、呼出煙はタバコを吸い終わった後も、約5分間吐く息から出続けています。受動喫煙が健康に悪影響を及ぼすことは、科学的に明らかであり、心筋梗塞や脳卒中、肺がんに加え、子どもの喘息や乳幼児突然死症候群等のリスクを高めることがわかっています。

禁煙治療について

禁煙補助薬を利用しましょう

つらいと思われがちの禁煙も、禁煙補助薬を用いることで禁煙後の離脱症状が緩和され、禁煙を比較的楽に確実にすることが可能です。日本では健康保険が適用される禁煙治療において、飲み薬のバレニクリンと貼り薬のニコチンパッチが使えます。また一般用医薬品(OTC)としてニコチンガムとニコチンパッチが薬局または薬店にて市販されています。

健康保険等で禁煙治療をうけるには

ニコチン依存症は病気であるということが認識されるようになり、2006年4月から、以下4つの条件を満たせば、健康保険等を使って禁煙治療を受けることができるようになりました。

  • ニコチン依存症の判定テストが5点以上(喫煙に関する10つの質問のうち半分以上が当てはまる)
  • 1日の平均喫煙本数×これまでの喫煙年数が200以上
    ※2016年4月より35歳未満には本要件がなくなりました
  • ただちに禁煙を始めたいと思っている
  • 禁煙治療を受けることを文書で同意している

但し、過去に健康保険等で禁煙治療を受けたことのある方の場合、前回の治療の初回診察日から1年経過しないうちは、自由診療となります。


TDSニコチン依存度テスト

※すでに禁煙をはじめた方は、禁煙する前の状態に照らしてお応えください。

No 設問 Yes
1点
No
0点
問1 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか?
問2 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?
問3 禁煙や本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか?
問4 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか? (イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
問5 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか?
問6 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか?
問7 タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
問8 タバコのために自分に精神的問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
問9 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか?
問10 タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか?
合計点数

※(注)禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抗うつなどの症状が出現している状態。