お薬を飲みやすくする工夫 -2016年6月30日掲載-

お薬の味が苦かったり、粉薬の量が多かったりすると、お薬を飲むことが苦手になってしまいますね。また、高齢になると、嚥下(えんげ)(飲み込むこと)がうまくできずに、むせてしまったり、お口の中に薬が残ったりしますね。

錠剤がダメ、粉薬がダメという方は、薬局で処方箋を出していただく時に、薬剤師にご相談ください。医師の承諾があれば、同じ成分のもので、錠剤⇔粉薬、ラムネのようにお口の中で溶けるお薬(口腔内崩壊錠)に変更ができる場合もあります。
今回は、変更ができない場合に、お薬を飲みやすくする工夫についてお話します。

嚥下(飲み込み)の動作

嚥下(飲み込み)の動作
摂食行為 先行期(認知期) 食べ物を認知し口まで運ぶ
準備期(咀嚼期) 食べ物を口腔に送り込み、咀嚼(そしゃく)し、飲みやすい食塊を形成する
嚥下第Ⅰ期 口腔期 食塊を口腔から咽頭に送り込む(随意運動)
嚥下第Ⅱ期 喉頭期 食塊を口腔から咽頭に送り込む(随意運動)
嚥下第Ⅲ期 食道期 食塊を食道から胃へ送り込む(不随意運動・蠕動(ぜんどう)運動)

食べ物を食べる時、お薬を飲む時には上記の5つのステップに分かれています。お薬をスムーズに飲み込むためにいくつかの方法と特徴をご紹介します。

服薬補助ゼリーを利用する

薬局などで1回分ずつのスティックタイプになっているものや粉を水で溶かして固めるものがあり、いくつかの味を選べます。

薬をゼリーで覆い、スプーンで飲み込みます。粉のお薬(特に小児の薬)で、酸性の食品と混ぜると苦味が出るものもあるので、果物の味のするゼリー・チョコレート味のゼリーなど薬剤師に聞いて購入しましょう。

とろみ調整食品(とろみ剤)を使う

高齢の方で、水分を摂る時にむせてしまうような場合、とろみ剤を使う時があります。濃さによってゼリー状にしたり、とろみの状態が調節できます。

良く攪拌をしないと塊になってかえって詰まってしまうことがあるので注意しましょう。また、成分にデンプンが含まれる商品は、一度なめたスプーンなどでかき混ぜると唾液が混じって、とろみがつかないことがあります。

オブラートを利用する

お薬を飲みやすくする工夫

オブラートはデンプンでできており、水にぬれると表面がつるつるして、飲みやすくなります。昔から利用されているので、ご存知の方も多いかと思いますが、使い方を間違うと、かえって口の中にくっついて詰まってしまうことがあります。

現在発売されているオブラートは、紙のように平たんなものと、袋状になって薬が包みやすくなっているものがあります。(袋状の方が少し価格は上がるようですが、扱いやすいのでお勧めです。)
使い方は、コップやお椀に水を入れておき、薬を包んだオブラートをさっと浸してそのまま飲み込みます。長くつけてしまうと、お水の中でオブラートが溶けてしまうので注意してください。つけにくい場合は、薬を包んだオブラートをスプーンに乗せてから水につけても大丈夫です。また、小皿に少量のお水を入れておき、オブラートを浸したまま、お水と共に飲み込むこともできます。漢方薬など味が苦手なお薬などは飲みやすくなると思います。
ただ、健胃薬のように、においや苦味が薬の効果となるお薬には適しません。

簡易懸濁法

約55度のお湯に錠剤を10分溶かして飲み込む方法です。

胃ろうや腸ろうなど直接胃や腸に栄養を送る時に使用されますが、お口から飲み込んでも大丈夫です。できれば、溶かした後とろみ剤でとろみをつけると飲みやすいです。また、お湯の量が多いと、全部飲みきれないので、少量で溶かしてください。お薬によっては、溶けないものもあります。

私たち薬剤師は、患者さまにお薬をきちんと服用していただき、お薬の効果が十分に発揮できて、治療がより良く進むことを望んでいます。