食物アレルギーについて -2016年4月28日掲載-

近年、先進国を中心に“食物アレルギー”の方が増えてきています。よく耳にする言葉ですが、どれくらい正確に理解できているでしょうか?今回は食物アレルギーについて説明をしたいと思います。

食物アレルギーとは

食物アレルギーは、食べたり、触ったり、吸い込んだりした食物に対して、体を守るはずの免疫のシステムが過剰に反応して起きる有害な症状をいいます。
食物アレルギーと混同しやすい以下のような症状がありますが、原因や治療法が異なるので注意が必要です。

  • 食中毒
  • 体質上乳糖が消化できず、牛乳を飲むと下痢をする乳糖不耐性などの食物不耐性症
  • サバなどの鮮度が低下しヒスタミンが産生されてアレルギーのような症状を起こす薬理活性物質(仮性アレルゲン)を摂取したことによる症状

食物アレルギーの3タイプ

食物アレルギーのタイプは大きく分けて次の3つです。

①即時型アレルギー

一般的に食物アレルギーと知られているもので、食品の摂取後2時間以内にじんま疹・咳・呼吸困難等を起こすタイプです。即時型アレルギーで、重症となるとアナフィラキシーと呼ばれます。

②口腔アレルギー症候群(OSA)

それまで普通に食べられていた新鮮な果物や野菜(たとえばリンゴやメロン、キウイ、トマト、きゅうりなど)を食べた時に口の中がピリピリしたり、耳の奥の方が痒くなったり痛くなったりする症状を起こすアレルギーです。加熱された加工品や市販のジュースでは誘発されません。ほとんどの場合花粉症を併発しています。大量に食べなければ重い症状になることはほとんどないので、口の中がピリピリしたら食べるのをやめてください。

③食物依存性運動誘発アナフィラキシー

原因物質を食べただけでは症状が起きず、食後に運動が加わる事によってアナフィラキシーが起こる症状です。原因物質として多い物は小麦や甲殻類です。

アナフィラキシーとは?

緊急性の高い症状の中でも、1つの臓器にとどまらず複数の臓器に重篤な症状が現れる場合を「アナフィラキシー」と呼び、さらにアナフィラキシーにおいて血圧低下やそれに伴う意識障害などの症状を起こす場合を「アナフィラキシーショック」と呼びます。アナフィラキシーショックは生命を脅かす可能性のあるたいへん危険な状態です。

即時型アレルギー

次に、即時型アレルギーについてもう少し具体的に説明します。

原因物質

この症状を引き起こす三大原因物質は卵・牛乳・小麦といわれていますが、その他原因物質の割合上位から、甲殻類・そば・魚類・ピーナッツ・魚卵・大豆と続きます。食べるだけでなく、触ったり吸い込んだりしても起こることがあります。

症状
部位 症状
①皮膚 かゆみ、じんま疹、赤み(赤斑)
②目 結膜の充血、かゆみ、まぶたの腫れ
③口・のど 違和感、イガイガ感、唇、舌の腫れ
④鼻 くしゃみ、鼻汁、鼻づまり
⑤呼吸器 声がかすれる、犬がほえるような咳、のどが締め付けられる感じ、咳、息が苦しい、ゼーゼー・ヒューヒューする、低酸素血症
⑥消化器 腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
⑦循環器 脈が速い、脈が触れにくい、脈が不規則、手足が冷たい、唇や爪が青白い、血圧低下
⑧神経 元気がない、ぐったり、意識もうろう、尿や便をもらす

病院を受診した方のおよそ9割の患者様に皮膚の症状は現れますが、逆に言うと1割の方には皮膚症状は全く現れないので注意が必要です。アナフィラキシーショックを起こす方も1割以上見られます。

表⑤~⑧の呼吸器・消化器・循環器・神経の症状はとくに迅速な対応、救急車の要請、搬送が必要になることもある注意すべき症状です。

治療薬

即時型アレルギーの治療薬としては、抗ヒスタミン薬・気管支拡張薬・ステロイド薬・アドレナリン自己注射薬であるエピペンなどがあります。エピペンは食物アレルギーの方や、蜂に刺される危険性の高い林業に従事している方が携帯していることも多いです。

治療薬 効果 備考
抗ヒスタミン薬 皮膚のかゆみ・赤み・じんま疹をおさえる アナフィラキシーには十分な効果を期待できない
気管支拡張薬 気管支が狭まって起こるぜんそくや咳き込みをおさえる のどの腫れ(浮腫)による咳や呼吸困難には効果がない
ステロイド薬 遅効性(4~6時間)
数時間後に症状が再発する遅発性アレルギーの予防
エピペン(自己注射薬) 即効性(5分以内)
心臓の動きを強くして血圧を上げる・血管を収縮して血圧を上げる・皮膚の赤みやのどの腫れを軽減する・気管支を広げて呼吸困難を軽減する
効果が持続するのは15分~20分程度のため、使用後に医療機関の受診が必要

症状が重い場合の対処

上記のような薬を症状によって使い分けます。
また、次の症状が1つでもあれば、緊急性の高いアレルギー症状があると判断して救急車を要請します。エピペンを携帯している場合はただちに使用しますが、エピペンは応急処置で使用した場合も15分~20分で効果がなくなるので、必ず救急車を呼んでください。

全身の症状 ぐったり、意識もうろう、尿や便を漏らす、脈が触れにくいまたは不規則、唇や爪が青白い
呼吸器の症状 のどや胸が締め付けられる、声がかすれる、犬がほえるような咳、息がしにくい、持続する強い咳き込み、ゼーゼーする呼吸
消化器の症状 持続する強い(がまんできない)お腹の痛み、嘔吐を繰り返す

食物アレルギーについて

体勢はできるだけ安静にします。
ぐったりして意識がもうろうとしている時は基本的にはあおむけに寝かせ、足を15~30cm高くします。移動する場合も、おぶったり歩かせたり車いすで移動させたりすると、急に血圧が下がって症状が悪くなるので、タンカや横抱きで移動させてください。
吐き気や嘔吐がある場合は顔を横に向けます。吐き気や意識のもうろう状態がなく呼吸が苦しい場合は、呼吸を楽にするために上半身を起こし後ろによりかからせても良いでしょう。

エピペンの使用手順
  1. ケースから取り出す
  2. オレンジ色の方を下に向け、利き手をグーにして握る
  3. 安全キャップを外す
  4. 太ももの外側に、エピペンの先端オレンジ色の部分をカチッと音がするまで強く押し当てて注射する。注射後は5つ数えるまで抜かない
  5. オレンジ色のニードルカバーが押し伸びていることを確認する
  6. 打った部位を10秒間マッサージする

エピペンの針は太く注射時に痛みもあり、動いてしまって太ももの裂傷を起こしてしまうこともあるため、しっかり体を固定することも大切です。針刺し事故を防ぐためにエピペンは必ずグーで握ってください。
よく言われることですが、エピペンを打っても命にかかわることはありませんが、打たないと命を落とすこともあるので、「迷ったら打つ」ということが基本です。

最後に

自分のお子様が食物アレルギーかも?と疑いを持っても、自己判断で離乳食の開始を遅らせたり、除去食にしたりしてはいけません。必ずアレルギーの専門医に相談してください。