逆流性食道炎について -2011年11月30日掲載-

逆流性食道炎とは

逆流性食道炎とは、食道内に胃酸や酸性の胃の内容物が逆流して、食道下部に炎症を生じる疾患です。油っぽいものをよく食べる方、太っている方、高齢で腰が曲がっている方に多い病気です。内視鏡検査ではびらん(ただれ)や潰瘍など、食道の炎症の様子が肉眼的に観察できます。

原因

逆流性食道炎の原因は、加齢や食生活等の要因で、食道下部括約筋(食道と胃の境目のことで、胃内容物の逆流防止装置の役割をする)のしまりが悪くなることによる、胃酸の食道への逆流です。また、食道の蠕動運動(胃酸や食物を胃へ押し戻そうとする働き)の低下や、食道裂孔ヘルニア(胃の一部が横隔膜の隙間から上の胸部に向かって脱出する疾患)も原因の一つと言われています。

症状

症状は胸焼け、呑酸(すっぱい水が上がってくる感じ)、げっぷ、嚥下困難、嚥下痛などが典型的です。胸焼けは食後に起こることが多く、夜間や前屈位時にも起こります。
更に、胸痛、ぜんそくや咳などの呼吸器症状、声がれやしゃっくりなどの咽喉頭症状など、さまざまな非典型的症状を有している場合があります。胸痛があるにも関わらず心疾患を認めない場合や、風邪ではないのに咳がなかなか治まらない場合には逆流性食道炎の可能性もあります。

診断方法

診断には以下の方法があります。

  • 問診による診断
  • 内視鏡検査で食道粘膜の状態を直接にみて診断
  • 24時間にわたって胃酸逆流のモニターをする、pHモニタリング
  • X線による方法 など

薬物治療

薬物治療には胃酸を抑える薬が主に使われ、その中にPPI(プロトンポンプ阻害剤)、H2ブロッカーがあります。

PPI

PPIは強力に胃酸分泌を抑えます。逆流性食道炎に対する保険適応は8週までであり、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、長期使用が認められています。

H2ブロッカー

H2ブロッカーはPPIほどではありませんが、強力な抑制力を持ちます。重症ではない場合や治ったあとの再発防止によく使われます。

症状が強い場合や、内視鏡で食道炎の所見が見られる場合は、最初に胃酸抑制の強いPPIを用い、それから様子をみて、少し弱いH2ブロッカーに変えることが多いです。また、症状の軽い場合には、H2ブロッカーを最初に投与し、効果が十分でないときはPPIに変更することがあります。しかし、軽症でも最初からPPIを使う場合がありますので、PPIを処方されたからといって重症なわけではありません。
その他に、消化管運動改善薬、制酸剤、粘膜保護薬などを補助的に使用することもあります。

日常生活

日常生活に気をつけることで、逆流性食道炎は抑えられます。食事は高脂肪食、甘いもの、香辛料は控え、早食い、食べすぎはしないようにしましょう。また、アルコールやタバコは控える、お腹を締め付けない服装をする、姿勢を正し前屈みにならない、重いものを持ったり力んだりしない、肥満や便秘にならないようにする、食後すぐに横にならない、就寝時は上半身を高くする、適度な運動をする、などを心掛けてください。ストレスからも逆流性食道炎が起こることがあるので、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

逆流性食道炎は再発しやすい病気です。自覚症状がなくても、食事や生活習慣に気をつけ、薬を医師、薬剤師の指示通り飲み続けることが大事です。また、定期的な内視鏡検査を行う事も大切です。

早い段階での治療が重症化を防ぐので、少しでも違和感がありましたら受診することをお勧めします。