体に色々な変化をもたらす甲状腺機能の異常 -2008年8月1日掲載-

甲状腺ってどこにあるの?

甲状腺は喉仏(のどぼとけ)の下あたりに、蝶のような形で存在します。普通は外から見たり触ってもわかりませんが、何らかの原因で甲状腺に炎症が起こると喉の部分が腫れてきます。

何をしているの?

食べ物の中のヨードを材料にホルモンを作ります。このホルモンは全身の新陳代謝を活発にする働きがあります。

ホルモンが多すぎると・・・

甲状腺
実際は体が疲れていても、「働け!」という命令が全身に送られ、からだのあちこちの細胞が活発に動くことにより、次のような症状が出ます。

  • 活動的になる
  • 動悸がする
  • 汗がよく出る
  • イライラする
  • 体重が減る
  • コレステロール値が低下する
  • 首が太くなる
  • 目つきが悪くなる

体重が減るなどメタボが心配な現代では一見喜ばしいように思えますが、甲状腺ホルモンが多すぎる場合は、いわゆる「アクセルを踏みっぱなし」の状態なので、次第に甲状腺が疲れてきてしまいます。

バセドウ病が代表的な疾患です。

ホルモンが少なすぎると・・・

多いときとは逆に元気のない状態になり、次のような症状が出ます。

  • 冷え
  • いつも眠い
  • 動作が遅くなる
  • 体重が増える
  • コレステロール値が上昇する
  • 物忘れがひどくなる

よく、うつ病や認知症・脂質代謝異常と誤解されることがあります。

橋本病が代表的な疾患です。

症状が当てはまったら

甲状腺の病気は、はじめはそれと気付かず、他の病気と間違われることが多いですが、体のあちこちに症状が出てくる、薬を飲んでもなかなか治らないといった場合は、血液検査を受けることをお勧めします。甲状腺ホルモンそのものの量や、甲状腺ホルモンを出すよう命令するホルモン量を測定することで、機能の低下や亢進(※)が分かります。

※亢進(こうしん)・・・働きが活発化すること

甲状腺のお薬

甲状腺機能低下症には、チラーヂン、チロナミンなどの甲状腺ホルモンを補う薬が使われます。

一部の貧血の薬や、市販の胃薬などと一緒に飲むと効果が落ちることがあるので、新しく薬を飲まれるときは医師、薬剤師に確認してください。

甲状腺機能亢進症には、メルカゾール、チウラジールなどの甲状腺ホルモンを抑える薬が使用されます。ごく稀にですが、メルカゾールは血液の中の顆粒球という成分が減ってしまう副作用が現れることがあります。初期症状として風邪のひき始めのような症状(体がだるい、熱が出る、喉が痛いなど)がおこります。副作用は服用開始から2ヶ月以内に起こることがほとんどですので、飲み始めてから2ヶ月間は原則として2週間に1回、血液検査をします。

気をつける食べ物は?

甲状腺機能が低下している人は、甲状腺ホルモンの材料となるヨードを含む食品をたくさん摂ればいいように思えますが、摂りすぎるとなぜか甲状腺機能が低下することが分かっています。ヨードは昆布などの海藻類に多く含まれていますが、普通に食事していただく分には影響はないと思われます。また、ヨード系のうがい薬を使いすぎることもよくないといわれていますので、毎日頻回にうがいをするのは避けてください。