日本原子力研究開発機構は24日、コンピューターで放射線被ばく線量をシミュレーションするのに使う日本人の人体モデルを新たに開発したと発表した。がんの放射線治療を受ける患者や原子力発電所などの作業者の被ばく線量をより正確に評価し、低減させるのに役立つと期待される。
新モデルのデータは医療・原子力施設が利用しやすくするため、プログラム共有サイト「ギットハブ」で無償公開する。論文は無料で読める国際オンライン科学誌プロス・ワンに掲載される。
現在使われている人体モデルは、国際放射線防護委員会(ICRP)が開発した欧米人の標準男女モデルを日本人の体格に合わせたものだが、臓器の形状を約1ミリ角の直方体(ボクセル)の組み合わせで再現しており、誤差が大きい。このため、目でレンズの役割を果たす水晶体や、細胞分裂の頻度が高い皮膚などの被ばく線量をあまり正確に推定できなかった。
新モデルは3次元CGに使われる多角形(ポリゴン)の組み合わせで構築することで、臓器の形状を正確に再現。体形の個人差や被ばく時の姿勢の違いに応じて拡大・縮小したり、変形させたりするのも容易となった。