政府は少子化対策の一環として、2026年度からの出産費用の保険適用に向け、月内にも本格的な検討に入る。現在は帝王切開などを除き保険適用外だが、原則50万円の「出産育児一時金」が支給されている。保険適用により全国一律の公定価格を設定し、出産費用の上昇に歯止めをかける。また、50万円までを念頭に妊産婦の自己負担ゼロを維持する方向で、安全・安心な出産環境を目指す。
23年末に閣議決定した「こども未来戦略」では、出産費用の保険適用を検討する方針を明記していた。厚生労働省とこども家庭庁は月内にも有識者会議を設け、保険適用の範囲や公定価格の在り方などの議論に着手する。
出産費用の全国平均額は22年度時点で約48万2000円。都道府県別では全国で最も低い熊本県が約36万円なのに対し、最も高い東京都は約60万円、神奈川県も約55万円と、地域差が大きい。
負担軽減に向け、政府は23年4月から出産育児一時金を原則42万円から50万円に引き上げた。ただ、都市部ほど物価高騰などの影響で出産にかかる人件費が上昇する傾向にあり、妊産婦の自己負担が生じるケースも多い。
このため、保険適用により全国一律の公定価格を設定。保険適用になれば妊産婦側に原則3割の負担が生じるが、出産育児一時金と同様、標準的な出産費用を自己負担ゼロとする仕組みを残す方向で調整する。
公定価格は、都市部でかかる出産費用より安くなる見通し。50万円未満で設定する場合は「新たな給付措置」を創設し、現在と同水準の負担軽減を図る案が浮上している。ただ、公定価格を低くすれば都市部で医療機関の経営リスクにつながる可能性もある。