劇症型溶連菌の感染者急増=過去最多ペース、致死率3割―識者「高齢者は警戒を」

急性咽頭炎などを起こす溶連菌が重症化した「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」の患者数が、過去最多ペースで増加している。多臓器不全や手足の壊死(えし)などを引き起こし、致死率は約30%。感染力が強いとされる株の検出数も増えており、識者は患者の目立つ高齢者を中心に警戒を呼び掛けている。

溶連菌は、主に人との接触や飛沫(ひまつ)で感染する。症状が出ないことも多いが、血液や筋肉などの組織に侵入して、まれにSTSSを発症。発熱や悪寒といった初期症状から急速に進行し、血圧低下や多臓器不全でショック状態に陥る。

国立感染症研究所によると、昨年のSTSS患者数は941人(速報値)で、現在の統計を取り始めた1999年以降で最多だった。今年は5月12日までに851人が確認され、昨年同期の約2.8倍に上る。

劇症型の原因となる溶連菌はA群やB群、G群などに分類。2010年代に英国で流行した「M1UK」株はA群の一種で毒素が強く、昨年後半からは関東地方などでも検出数が増えている。厚生労働省は監視を強めているが、STSS増加との関連は分かっていない。

感染症に詳しい東京女子医科大病院の菊池賢教授は「STSS患者は65歳以上の高齢者が大半。靴擦れなど足の小さな傷や、水虫のただれから菌が入ることが多い」と指摘。高齢者介護に携わる人は、足が清潔に保たれているか毎日観察してほしいと呼び掛ける。

医療機関を受診しても早期の診断は困難で、症状の経過で判断するしかないという。足が腫れて急速に拡大し、39度以上の高熱などが出た場合は早急に対応が必要で、菊池教授は「早い段階で抗生物質を投与すれば治療できるが、進行すると感染部位の切断が必要になる。強い症状があれば、入院設備のある病院を受診してほしい」と話す。

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