「頭が軽くなって癖になる」=広まる市販薬の過剰摂取

せき止め薬や風邪薬などの市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)が若者を中心に広がっている。10代の薬物乱用に占める市販薬使用の割合は6割超に上るとした調査もある。専門家は「背景には、若者の生きづらさがあるのではないか」と分析する。

「起きているのか寝ているのか分からない気分になる」。高校3年の少女は、気持ちが沈んだとき、風邪薬を40~50錠飲む。規定量の10倍以上で、飲むと気持ち悪くなるが、「嫌なことを考えられなくなって、頭が軽くなる」と明かす。中学3年で始め、いつのまにか癖になったという。

国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)によると、薬物乱用で診療を受けたり、入院したりした10代を対象とした調査では、使用薬物のうち市販薬が占める割合は2014年に0%だったが、22年は65.2%まで増加した。

市販薬の乱用増加は、14年に危険ドラッグの購入や使用が禁止された一方、一般医薬品のインターネット販売が解禁され入手しやすくなったことなどが背景にあるとみられる。同センター薬物依存研究部の松本俊彦部長は「新型コロナ禍で他人とコミュニケーションを取る機会が減ったことや、家族に問題があっても家から出られなかったことも影響しているのではないか」と分析する。

市販薬の中には覚醒剤などの違法薬物に似た成分が含まれる製品も存在し、大量の服用を続ければ依存症になる可能性がある。

松本部長は、生きづらさを紛らわせるために過剰摂取を繰り返す人がいるとした上で、「依存性の強い薬を急にやめるのは難しい。叱責するのではなく、本人の話を聞いた上で医療機関のアドバイスを受けるべきだ」と呼び掛けている。

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