「新たな変異、備え必要」=訪日観光再開で専門家―検疫緩和ですり抜けも・新型コロナ

新型コロナウイルスの感染拡大で停止していた海外からの観光客受け入れが10日、再開された。国内では今月から水際対策が緩和され、検疫で判明する陽性者数が大きく減っており、感染者が検査をすり抜けている可能性も指摘される。専門家は訪日観光再開について、「新たな変異株が登場しない限り影響は少ない」としつつも、状況に応じた柔軟な検疫態勢見直しの必要性を訴えている。

政府は6月から、入国者数の上限を1日2万人に倍増。各国・地域をウイルスの流入リスクに応じて分け、入国時検査や待機を免除するなどの方式を採用した。新型コロナ拡大以降、続けていた全員検査からの方針転換で、入国者の8割ほどが免除対象となった。

検疫で判明した陽性者数はその後、激減した。厚生労働省によると、5月は1日当たり48~142人で推移していたが、水際対策緩和後の6月2~10日は5~19人だった。

関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は、減少の理由として、緩和による検査すり抜けだけではなく、世界的な感染者減の結果とも考えられると分析。「添乗員付きのパッケージツアーに限るなど、政府は慎重に対応している。受け入れ再開による感染拡大の恐れはほぼないだろう」とみる。

一方で勝田氏は、今後発生し得る新たな変異株への備えも重要と指摘する。「感染力が強く、重症度も高い変異株が海外で発見された場合は、早急な検疫の強化が必要となる」と強調し、「海外の動向をいち早く情報収集し、状況が変化したときはいつでも検疫態勢を変えられるようにしておくべきだ」と訴えた。

厚労省幹部は「新しい変異株が出てきた場合は、流行国からの渡航を制限したり、全数検疫にしたりするかもしれない。海外の動向を見ながら対応していく」と話した。

時事通信社

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