相次ぐ小児肝炎、原因は?=アデノウイルス関与か―国内公表1カ月

原因不明の小児急性肝炎が、日本でも相次ぎ報告されている。国内1例目の公表から約1カ月が経過し、21日までに24人の疑い例が判明。欧米では風邪などの原因となるアデノウイルスの関与が疑われており、専門家は「手洗いなどの感染対策継続が効果的だ」と指摘する。

肝炎は肝臓に炎症が起き、細胞が壊される病気。B型やC型などの肝炎ウイルスにより発症するほか、アルコールが原因の場合もある。

今回の小児急性肝炎について世界保健機関(WHO)は、肝機能を示す数値が悪い16歳以下で、A~E型の肝炎ウイルスが検出されないケースを症例として暫定的に定義する。欧州疾病予防管理センターの19日時点のまとめでは、31の国と地域で621人の報告がある。嘔吐(おうと)や下痢などの症状が多いが、肝移植が必要な例もあり、14人が死亡した。

アデノウイルスが肝炎の原因となることはまれだが、英国では症例の約7割から検出されたとの報告がある。特に、感染性胃腸炎を引き起こす「41型」が多く見つかっている。一方、厚生労働省などによると、国内では検出されたのは24人中2人で、型も異なる。日本で同ウイルスが流行している兆候もない。

専門医でつくる日本小児肝臓研究会によると、子どもの重症急性肝炎は以前から年に20例前後あり、その半数ほどが原因不明という。

長崎大の森内浩幸教授(小児科学)は「アデノウイルス41型の関与は間違いないだろうが、それだけでは説明し切れない」とした上で、新型コロナウイルスへの感染対策が進んだ結果、さまざまなウイルスにさらされなくなり、子どもの免疫力が低下した可能性を指摘。「原因不明の小児急性肝炎は以前から報告があり、現時点では国内で増加したとは考えにくい。41型の関与が考えられる以上、食事前の手洗いなどを続けるのが効果的だ」と話している。

時事通信社

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