菅首相「7月末目標」に躍起=「総力戦」の高齢者ワクチン接種

新型コロナウイルスワクチンをめぐり、菅義偉首相が自ら目標として掲げる7月末までの高齢者接種完了に躍起になっている。感染対策の決め手と位置付ける接種の遅れは、東京五輪や衆院選を間近に控え「政権の命取りになりかねない」(周辺)ためだ。厚生労働省に加え総務省も動員、自民党の協力も仰ぐなど「総力戦」の様相を呈している。

「絶対に7月中に終わらせる」。首相は最近、10日から本格化する高齢者接種への意気込みを周辺にこう語った。

緊急事態宣言の延長を決めた7日の記者会見では「私自身が先頭に立って、接種加速化を実行に移す」と強調。24日に東京と大阪に「自衛隊大規模接種センター」をオープンさせ、自治体の取り組みと合わせ、全国で1日100万回の接種を目指す考えを示した。

さらに、全国1741市区町村のうち、現時点で約1000が7月末までに高齢者接種を終了できるとの見通しも示し、国が後押しすれば目標達成は可能と力説した。

首相が接種加速に前のめりになるのは、感染が一向に下火にならないことへの危機感からだ。英オックスフォード大研究者らの統計サイトによると、日本の接種率は5日時点でわずか2.2%。米国(44.4%)などから大きく後れを取っており、このままでは「国民の不満が噴き出しかねない」(自民党幹部)との焦りがある。

このため、首相は「本来は厚生労働省の仕事」(政府関係者)である自治体との調整に、自身が強い影響力を持つ総務省を動員。4月21日に武田良太総務相を首相官邸に呼び、自治体の支援に当たるようひそかに指示した。

総務省はすぐに呼応した。首相が同23日に高齢者接種の「7月末目標」を打ち出すと、その日のうちに達成に向けた「尽力・協力」を呼び掛けるメールを全国の自治体に送信。27日には地方支援本部を発足させ、課長補佐級以上の職員が市区町村の首長らに電話し、事情を聴き始めた。

これにより浮かんできたのは、市区町村が地元医師会と連携を取れていない実態だ。総務省関係者は「一家言ある医者も多い。日本医師会が呼び掛けてもなかなか動かないようだ」と語った。

そこで首相官邸は、医師会とパイプを持つ自民党に協力を要請。党内7派閥は6日、緊急の事務総長会議を党本部で開催した。党幹部は「医師会との関係がこじれているなら解きほぐすのが政治の役割だ」と解説する。

もっとも、ある首長は「内閣府と厚労省だった窓口に総務省が加わり、現場が混乱する」と、政府の動きに戸惑いを隠さない。これから急増する見通しのワクチン供給に、各自治体がどこまで対応できるかも不透明だ。与党内からは「目標未達のときの国民の失望が怖い」(自民党中堅)と不安の声も漏れる。

時事通信社

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