「集団免疫」獲得、困難に=コロナワクチン接種、世界で進まず―東京五輪開催に逆風

1年延期された東京五輪・パラリンピックの開催が約半年後に迫る中、新型コロナウイルスの世界的な流行には収束の兆しが見えない。ワクチンによる感染抑制が大会実施の成否を左右するが、先進国、途上国とも接種ペースは鈍く、カギとなる「集団免疫」の獲得は困難な情勢だ。世界中から選手や観客が集まる「スポーツの祭典」の実現に向けた道のりは険しい。

◇WHOは悲観

「破滅的な倫理上の過ちを犯しかねない」。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は18日、貧しい開発途上国がワクチンを確保できないことに警鐘を鳴らした。

コロナの感染拡大が抑えられる集団免疫の達成には、人口の6~7割が免疫を獲得する必要があるとされる。ワクチンが途上国に行き渡っていない現状では、一部の国で集団免疫が獲得できたとしても、「年内に世界全体の人を守る規模にはならない」(スワミナサンWHO主任科学者)見通しだ。

ワクチンを確保したはずの富裕国であっても、接種は遅々として進んでいない。コロナの感染者・死者数ともに世界最多の米国では、トランプ政権が昨年末までに2000万回分を接種する目標を掲げたが、年が明けて1月半ばにようやくその半数に達した。対応が州任せになっていることが遅れの一因とみられ、専門家は「連邦政府の指導力が欠如している」(米ブラウン大のジャー公共衛生学部長)と断じる。

コロナの震源地となった中国では、昨夏以降、開発中のワクチンの緊急投与を進め、昨年末には第1号となる国産ワクチンを承認。人の移動が増える2月中旬の春節(旧正月)を前に接種拡大を目指すものの、現時点で目標の1割程度にとどまっている。公開情報が限られる中、ワクチンの有効性や安全性への懸念もくすぶる。

◇選手の優先接種に壁

五輪関係者からは、大会に出場する選手の優先接種を求める声も出ている。しかし、供給量が限られる中、各国は医療従事者や高齢者らを優先しているのが現状だ。ドイツの世論調査では、66%が選手の優先接種に反対し、賛成は19%にとどまった。

今回の東京大会を、スペイン風邪の世界的大流行を乗り越えて1920年にベルギーで開催されたアントワープ五輪に重ねる向きもある。菅義偉首相は「人類が新型コロナに打ち勝った証し」にすると意気込む。しかし、命を守る切り札とされるワクチンの普及がままならず、コロナ感染拡大の収束も見通せなければ、五輪に向ける世界の視線は冷たさを増しかねない。

時事通信社

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