控訴断念「やっとここまで」=原告団長や弁護士―ハンセン病家族訴訟

ハンセン病元患者家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、安倍晋三首相が控訴断念を表明したことを受け、原告団長の林力さん(94)=福岡市=は9日、「第一歩だ」とかみしめるように話した。

父親が患者だった林さんは同日早朝、書斎のテレビで「控訴断念」の速報を娘と確認した。「当然のこと。やっとここまできたか」と声を震わせた。

裁判では、現在も差別被害が続いているとして大半の原告が匿名だった。林さんは「偏見に苦しんできた人々を救済するという新しい問題が国に課せられた。控訴断念は第一歩だ」と語気を強めた。

父親が鹿児島県のハンセン病療養所に入所したのは林さんが12歳のころ。それから家族に対する国の責任を認めた判決が確定する見通しとなるまでに80年以上がかかった。「長い長い道のりだった。死ぬ前に、ようやく一区切りついた」と胸をなでおろした。

ハンセン病家族訴訟弁護団の鈴木敦士弁護士も「控訴断念の表明を歓迎したい」と話した上で、「家族に対してまだ残っている差別や偏見の解消に向け、国はきちんと協議して施策を行ってほしい」と注文した。

一方、厚生労働省内では、控訴断念の方針に困惑も広がった。ある幹部は「『官邸から指示があった』という以外、何も言いようがない。今後どういう施策を進めるかなどは本当に決まっていない」と話すにとどまった。

中堅幹部によると、省内には「ハンセン病にだけ家族に対する責任を認めてしまうと『他の病気との整合性は』という問題も出る。家族への賠償となったら事務手続きも大変になる」との慎重論もあったという。

時事通信社

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