ハンセン病家族訴訟、控訴せず=安倍首相表明「異例の判断」―政府

安倍晋三首相は9日、首相官邸で記者団に対し、ハンセン病元患者家族の訴えを認めて国に賠償を命じた熊本地裁判決について、控訴を断念すると表明した。国の隔離政策で差別を受けたとする家族の主張を重く受け止め、政府として人権侵害の責任を認める必要があると判断した。

首相は地裁判決に関し「一部には受け入れ難い点があることも事実だ」と述べる一方、「筆舌に尽くし難い経験をされたご家族の皆さまのご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない。異例のことではあるが、控訴をしないこととした」と語った。首相はこれに先立ち、根本匠厚生労働相ら関係閣僚に対応を指示した。

元患者家族561人が国に1人当たり550万円の損害賠償と謝罪を請求。熊本地裁は6月28日、国の責任を認める初めての判断を示し、計約3億7600万円の支払いを命じた。国側は、家族は隔離対象ではなく、偏見や差別を作り出したり、助長したりしていないと主張していた。

首相は今月3日、「患者、家族の皆さんは人権が侵害され、大変つらい思いをされた。判決を精査しなければいけないが、われわれは本当に責任を感じなければならない」と語っていた。政府内では「理屈で言えば控訴だ。(賠償を)家族にまで広げると前例になる」(高官)として控訴が妥当との見方もあった。

ハンセン病をめぐっては、元患者が起こした訴訟で2001年に熊本地裁が国の賠償責任を認め、当時の小泉純一郎内閣が控訴を断念した。

時事通信社

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